「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集4

克全

第11話追放6日目

今日も遠見の鏡を稼働させ、オリビアの様子を見ていた。
前日の惨劇で血と脳漿で汚れた部屋ではなく、別の部屋に集結していた。
新たに幾人もの大人達が集められていた。
聖女に近い年代は信用できないので、どうしても壮年の者達ばかりになる。
尋問され利用される生徒会役員達は別だが。

オリビアはまた魔窟に向かっていた。
今度はできたての魔窟ではなかった。
村人達がミイラ化するような前から、酷政圧政が行われていたのだ。
その恨みで生まれた魔窟はそれなりに成長していた。
いや、想像を絶するほど成長していた。

だが、オリビアの歩みが止まる事はなかった。
いや、遅くなることすらないのだ。
強力な魔窟に挑んでいるとは思えないような、将軍位を得ている者を複数投入しての魔窟掃除以上の速さで、魔を滅ぼしていくのだ。
見ていて驚愕する強さだ。

国王や重臣達がオリビアの動向に気をとられている間にも、太陽神殿のルーカス大神官とメグ聖女は陰で蠢動していた。
大神官は神殿戦力を結集して、王国軍との戦いに備えていた。
各国の神殿を利用して王国の捜査から逃れようとしていたが、その手が上手くいかなかった時の事も考えていたのだ。

幽閉されているメグ聖女は、その怪しい魅力を発揮して、見張りの騎士や徒士を魅了して、いつでも逃亡できるようにしていた。
いや、それどころか、王城内で謀叛を起こせるようにしていた。
メグ聖女に見つめられ、話しかけられてしまうと、真っ当な思考が失われ、メグ聖女の言う事がすべて正しいと思ってしまうのだ。

別の塔に幽閉されているジョージ王太子は、何もできないでいた。
国王から厳重注意を受け、幽閉された時点で、次期国王になれる見込みはなくなり、王太子に近づいて親しくなろうとする者がいなくなった。
廃嫡されるだろう王太子と親しいと思われれば、次期国王、恐らくハリー第二王子が新たな王太子に立てられるのだろうが、ハリー第二王子に嫌われてしまう。

現国王と次期国王に嫌われてしまうと、二代に渡って国の中枢から外されてしまうので、没落してしまう可能性が高い。
それを恐れて、警備の騎士や徒士もジョージ王太子の言う事は全く取り合わず、完全に無視した状態だった。

だがその中で、メグ聖女の監視に当たっているはずの騎士や徒士が、王太子を監視している騎士や徒士に近づき、言葉巧みに彼らをメグ聖女に会わそうと画策した。
最初は警戒して応じなかった王太子監視役達が、ある人物が現れ、メグ聖女に会うよう勧めたことで、流れが大きく変わってしまった。

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