「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集4

克全

第3話追放2日目2

「わっはっはっは。
早速馬脚を露しおったぞ!
神殿の修道女様を騙り、治癒ができると民を欺きおったぞ。
これで謀叛人であることは明らかだ。
直ぐに追手を差し向けて処刑しろ。
マクリン公爵!
直ぐに責任をとれ!
家督をノアに譲るのだ」

「黙れジョージ!
先ほどからの言動は見苦し過ぎる!
そのように礼節もわきまえぬようでは、王太子の資格なし!
最後まで黙って見ていろ!」

「王太子殿下。
お静かになされた方がいいと思います。
確かに少し下品な言動ですよ。
民や神殿を想って言葉が強くなったのでしょうが、いけない事ですよ」

「そうか、そうだな。
少々乱暴であったな。
申し訳ありませんでした国王陛下。
マクリン公爵も許せ」

オリバー国王もマクリン公爵も、いや、その場にいた大人達全員が、王太子と聖女の関係を不信に思っていた。
王太子の言動も愚かすぎた。
小さい頃から知っている王太子の言動と違い過ぎた。

同時に聖女の介入の仕方もおかしかった。
聖女が介入してきたのは、王太子の廃嫡にまで話が及んだからだ。
それまでは一切王太子を諫める事もなかったし、オリビアを庇う言葉もなかった。
慈愛に満ちた聖女とは思えない態度だった。
いくら魔を封じる事に特化した聖女とはいっても、慈愛の言動がなさ過ぎた。

「大麦はあるかしら?
あれば水で煮て大麦粥を作ってください。
私は粥ができるまでに、治療に使える薬草を探してきます」

「「はい」」

「僕も手伝う」

王太子が愚かな言動を繰り返し、時間が過ぎる間に、オリビアは病の娘がいるという民の家を訪れていた。
テキパキと指示を出し、父親や母親に治療の準備をさせていた。
病の娘の兄であろう年頃の子供が、オリビアを手伝おうとしていた。
父親も慌てて後を追っている。
オリビアは村の周囲にある森に入り、素早く草木を確かめ、丁寧に、いや、慎重ともいえる手つきで苔や草を集めていた。

「集めた薬草を洗いたいので、小川か沢に案内してください」

「こちらでございます」
「こっちだよ」

その選別は厳しく細かく、葉、茎、根だけでなく、花弁や花びら、茎の表皮や内皮まで厳しくより分けていた。

「坊や、よく覚えておきなさい。
この細かい作業が、妹を助けられるか死なせるかの瀬戸際になります。
慌てず手を抜かず、丁寧により分けなさい」

「はい!」

オリビアの言葉に男の子がしっかりと返事をする。
父親も喰らいつくような視線で、何一つ見逃さないようにしている。

「ではこれを娘さんに食べさせます。
急いで戻りましょう」

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