第5話

「おい、下郎。
余の花嫁だと言っておいて、殺してどする。
首が胴から離れた死体など花嫁に押し付けられても邪魔なだけだ」

「なにを言っている！
お前のような者が竜神様を名乗るなど、不遜の極みだ！
やれ、殺せ、叩き殺せ！」

大神官がわめいています。
似非騎士団長を殺されて激高したのでしょう。
金色の戦士が尋常一様でないの強さなのが分かっていません。
板金鎧を素手で突き破るような技と力を持っている戦士なのです。
似非騎士に勝てる相手ではありません。
問題は数の暴力ですが……

それからは虐殺に近い状況でした。
無双の強さです！
数の違いなど全く関係ありませんでした。
生贄台に登ってこようとした似非騎士が、百人以上一撃で殺されます。
それも素手でです。
素手で首を刎ね、心臓を掴みだします。
背中に冷や汗が流れるほどの恐怖を感じます。

「さて、竜神を崇めると言いながら、余を殺そうとした背教徒よ。
その罪、死をもって贖え！」

そう言った黄金の戦士は、大神官の胸を素手で突き破り、心臓を取り出しました。
よく見ると、手は人の手ではありません。
爬虫類、蜥蜴のような手をしています。
その手を高々と掲げ、宣言したのです。

「余は竜神なり！
余の名を騙り、余の名を穢す者は許さん。
そのような者は余直々に成敗してくれる。
今後竜神を名乗る事、絶対に許さん！」

そう言うと、見る見る身体が強大化しました。
見上げるような巨大な身体です。
ですが私が伝説で聞いていた、教会の絵画に描かれていた姿と違います。
まるで蛇のような姿です。
その姿で、人語を話されます。
いえ、話されるとは少し違います。
耳ではなく、心に伝わる感じです。

「さて、邪悪な者の心は直ぐ分かる。
まずはジョセフとかいう王太子だな。
弾けよ」

ジョセフ王太子は逃げる事も命乞いすることもできないでいました。
馬鹿のように口を開けているだけでした。
そのまま、茫然自失のまま、身体が粉々に弾けて死んでしまいました。
あっけない死に様です。

「ジェシカ、デイジー、ジャクソンか。
心が邪心で満ちている。
ただ殺すのでは、後の世の教訓にならんな。
四肢を引き千切り、徐々に身体を腐らせ、永劫の激痛に苦しみ悶えるがいい」

竜神様がそう言ったとたん、三人の四肢が音を立てて潰れていきます。
三人は、火で炙られた芋虫のように、痛みにのたうちまわっています。
身体中から黒く醜い液がながれています。
竜神様の言う腐っているのでしょう。

「さて、憶病で臆病者のローリーと、余の名を騙った騎士も弾けて死ね。
さて、我が花嫁シータ。
本当に余の花嫁になる気はあるのか？」

さて、自暴自棄になっているわけではないのですか。
いえ、なっているのかな？

「私を愛してくれているのですか？
それとも餌だと考えているのですか？」

「ふむ、愛してはいないが、興味はある。
それに考えもある。
人間には政略結婚という考えがあるそうだな。
これは政略結婚だ」

竜神様と私の政略結婚ですか？
とても興味がありますね。
全てを失った私には、竜神様の後ろ盾は絶対に必要なモノですね。

「分かりました。
政略結婚をお受けします」