「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集4

克全

第2話

「竜神様に選ばれた花嫁シータよ。
国のため民のため、誇り高き役目を完遂してくれ」

宰相のライリーが身勝手な事を言います。
私を生贄にする事で、王国の実権を握ろうとしているのです。
私が王妃になったら、ジョセフを助けるために排除しようと思っていたのを、気づかれていたのかもしれません。
私は自分が思っているほど賢くはなかったのでしょう。

「間違っている!
こんな事は間違っている!
竜神を大人しくさせるために生贄を捧げるなど、王家王国の恥だ。
それにそもそも竜神などまやかしだ!
実際ここ二百年、生贄など捧げなくても竜は暴れなかった。
それを急に生贄を復活させるなど、謀略以外の何物でもない!
全てを仕組んだのは、いけしゃあしゃあとジョセフの横にいる女狐だ!」

アリア王女殿下が私を助けようとしてくださっています。
猿轡をされて、反論もできない私に代わって、宰相のライリーとジェシカを罵倒してくださっています。

「お黙りなさい、アリア王女!
これは宰相が独断でやった事ではありません。
教団が竜神様のお言葉を聞いて進言した事です。
それに逆らうなど、竜神様と教団を愚弄したのと同じですよ。
いくら王女とはいえ、許されることではありませんぞ!」

「黙れ生臭!
お前からは銭臭がプンプンするわ!
どうせライリーとジェシカから裏金を積まれて、偽りの宣託を下したのだろう。
そのような事、幼子にもわかっている事だ。
国王陛下!
今が好機でございますぞ!
奸臣佞臣どもが尻尾をだした今こそ、成敗する時でございますぞ!」

教団を牛耳る大神官が、不敬にもアリア王女殿下を脅します。
ですがそれに怯むような殿下ではありません。
王国のために剣を極められ、武姫とまで称えられた方です。
真正面から宰相も大神官も非難されます。
そして国王陛下に奮起をもよおされます。

「ふ、ふ、ふ、ふ。
国王陛下からは内意をいただいているのですよ。
ねえ、国王陛下」

「……」

「陛下?
父王陛下!?
何故でございますか?!
このままではシータが殺されてしまいまずぞ!
そんなことになったら、クルドケンブリッジ王国が黙っておりませんぞ!」

アリア王女殿下が母の母国の事に言及しています。
確かに祖父王陛下も、伯父の王太子殿下も、私を可愛がってくれていました。
ですが、だからといって、戦争にしても敵を討ってくれるかどうか?
おふたりには国を担う責任があります。
自国の民に負担をかけてまで、戦争を仕掛けるのが正しいとも思えません。

「ふ、ふ、ふ、ふ。
王女殿下は知らないようなので教えて差し上げましょう。
クルドケンブリッジ王国は国王が弑逆され、内乱状態なのですよ。
とても我が国に攻め込む余裕などないのですよ」

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