「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集4

克全

第14話王太子ルーカス視点

「殿下、もうやめましょうよ。
危険すぎますよ。
冒険者に依頼すればいいじゃないですか」

「ダメだ。
絶対にダメだ!
冒険者に依頼したモノは受け取らないとナウシカが言っていたではないか。
いや、それよりも、手に入らなければ、ナウシカ自身が家臣団を率いて狩りに行くと言っていたではないか!
ナウシカにそのような危険な真似はさせられん!」

「ですが殿下がわざわざ指揮される必要などありませんよ。
騎士隊長か騎士団長に命じられればすむことです」

「臆病者が!
それほど怖いのなら、ジャンはついてくる必要はない!
ジャンは毒見役だからな。
それに騎士団長が指揮してくれているのだ。
私の安全は完璧に図ってくれる。
私が直卒する事で、騎士たちの士気も上がるのではないか?
なあ、騎士団長」

「はい、その通りでございます。
前回のバッファロー狩りに参加できなかった者たちは、とても悔しい思いをしておりました。
今回は御前で日頃鍛えた技を披露できると、張り切っております」

「うむ、頼んだぞ」

今日は狩りである。
前回のバッファロー料理は絶品であった!
野生の獣など、硬くて美味しくないと思っていたが、骨や筋を煮だして作った濃いスープで下茹でして、味を浸み込ませた後で焼いたり揚げたりするとは考えもしなかった。

最初詳しい作り方が出回っていなかった時には、水で煮て味が抜けてしまう失敗があったが、ナウシカが詳しい調理法を公開したので、どこの貴族家でも野生の獣を美味しく料理して食べられるようになった。
これで野生の獣の値段が跳ね上がった。
今までは硬い肉を食べやすくするために、薄く切った料理しかなかったが、今では塊で食べられるようになった。

元々の肉の旨さにスープの美味しさが浸み込んだ肉の塊が、表面に刺激的な味付けがされて、更に香ばしく焼かれているのだ。
これが美味くないはずがないのだ!
特に美味しかったのがハンバーグという料理だ。
これがまた何とも言えず美味い!
スープの旨みではなく、バッファロー本来の美味しさだけの料理だ。
香草でバッファロー独特の臭みが打ち消され、いや、臭みが風味となっている。
私はスープを含ませた肉よりもこちらの方が好きだ。

今度の肉はもっと美味しいという。
好みは別れるとナウシカが言っていたが、それでもナウシカが美味いというのなら間違いなく美味しいのだろう。
それに、ビッグベアなどという強力な魔獣の相手を、ナウシカにさせることなど、絶対にダメだ。
ナウシカが欲しいという食材は、全て私が手に入れてみせる!

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