「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集4

克全

第11話ナウシカ視点

「ナウシカ!
バッファローを獲ってきてやったぞ!」

ルーカス王太子殿下が満面の笑みを浮かべてやってこられます。
約束のバッファロー二百頭を狩ってくてくださったのでしょう。
自分が食べたいとはいえ、その情熱には驚かされます。
ですが正直助かりました。
今は仕入れさえままならない状態になっていますから。

そもそもの始まりが王太子殿下に豚肉料理をだしたことから始まりました。
それが国王陛下にを食べていただくことになり、大評判となりました。
念願の料理屋を始める最高の機会です。
そこで使っていなかった中屋敷を急遽料理屋としたのです。
それが大好評で、予想以上の利益を出してくれました。
最初の内は……

問題はそれによる豚肉の価格高騰です。
仕入れ値が五倍になってしまうと、当初の原価率計算が吹き飛んでしまいました。
直ぐに食材を猪に切り替えたのですが、同じでした。
猪も高騰してしまうのです。
それは食材を羊に変えて山羊に変えても同じでした。

これで本命にしていた牛を選ぶことができなくなりました。
牛は農作業の大切や労働力です。
そのためとても固く筋張っています。
食べるのは年老いて働けなくなった時だけです。
ですが私なら、美味しく料理できると思います。
自信があります。

ですが、豚などと同じように価格が五倍なると、大切な労働力でも、牛を手放す農家が出てしまいます。
まあ今はどの食材も、取り上げた直後は五倍十倍の高値をつけますが、他の新作料理が出ると三倍くらいに落ち着くようです。

なので家畜ではなく野生の動物を使う事にしました。
比較的狩り易くて安価な野生種で、私の記憶にある料理にアレンジしやすいモノ。
そこで導き出されたのがバッファローでした。
バッファローの方が家畜牛よりも美味しいとなれば、余ほどバカな貴族以外は、領民の農耕牛を取り上げたりはしないはずです。

しかもそれが領主軍の軍事訓練のついでに狩れるとなれば、お金を出してまで農耕牛を買おうとも思わないはずです。
それは平民の金持ちも同じです。
金に飽かして、冒険者に狩りを依頼するでしょう。
そのために殿下を唆してバッファローを狩ってもらったのです。

「さて、殿下にはお礼に豚肉料理を食べていただきましょう。
正直今日の料理は自信作です。
私が一番好きな料理でもあります。
すでに完成していますので、ご堪能ください。
私は殿下が狩ってきてくださったバッファローの試作のため、席を外させていただきます」

「ダメだ!
ぜったにダメだ!
ナウシカは余の側にいて料理の説明をするのだ!」

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