「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集4

克全

第1話悪女テレーザ視点

「ねぇ、エーミールさまぁ。
私と結婚してくださいぃ」

「いや、そんな事を言われてもな~。
もうナウシカとの結婚を王家に届けてしまっているんだ。
いまさらなかったことにはできないよ。
それにテレーザとは遊びの約束じゃないか」

「そんな事は、分かっていますけどぉ。
本当にそれでいいんですかぁ。
ナウシカと結婚しても、つまらないですよぉ。
顔も童顔ですしぃ。
身体も子供みたいですよぉ」

「まあ、それはそうなんだが、ナウシカは金を持っているからな。
結婚したらあそこの聖銀鉱山の利益の一部をもらえるんだよ」

「それは、利益の一部ではありませんかぁ。
子供が二人産まれたらぁ。
二人目がナウシカのシンクレア伯爵家を継ぐのでしょ?
そうなったら、もうその一部ももらえませんよぉ」

「そな事はない。
支援を約束してくれてる」

「それは、エーミールさまの借金をしらないからですよぉ。
借金の後始末をさせられたら、王家に離婚を申し込むのではありませんかぁ」

エーミールが黙り込みました。
バカで浪費家で浮気性いクズ男でも、自分の借金額が、愛想をつかされるくらい莫大だという事は理解できるようですね。
これなら大丈夫でしょう。
一気に畳み込みましょう。

「もしエーミールさまの借金額がソルトーン侯爵に知られたら、跡継ぎから外されるのではありませんか?」

「なんだと?!
ある時払いの催促なしだと言ったではないか?!
父に言いつけるつもりか!」

「私と結婚してくださるのなら、そんなことは言いませよぉ」

「だが、しかし、この結婚は父上も王家も乗り気なのだ。
いまさら婚約を解消するのは難しい」

「大丈夫ですよぉ。
私がナウシカに虐められたことにすればばいいいのですよぉ」

「ナウシカが?
テレーザに虐められた?
誰がそんな話を信じるんだ?
まるっきり逆じゃないか!」

「ふっふっふっふ。
そんな事はないですよぉ。
私は気が優しくて大人しい女なんですよぉ。
ナウシカは意地悪で気の強い女なんですよぉ。
多くの貴族士族が証言してくれますともぉ」

「金か?
金の力で偽証させるのか!」

「エーミールさまぁ。
ソルトーン侯爵家から勘当されたいんですかぁ?
そんな事になったらぁ。
取り立ての者に殺されてしまいますよぉ」

「なんだと?!
俺を脅すつもりか?!」

「そんなつもりはありませんがぁ。
我が家も又貸ししているだけなんですよぉ。
金主は本当に怖い人なんですよぉ」

「まさか?!
金主は犯罪者ギルドか?!」

これでエーミールは、私の台本通り婚約破棄のセリフを言うはず。
その時に合わせて呪術を発動してナウシカを殺せば、婚約破棄のショックで死んだことにできるでしょう。
ナウシカは天涯孤独の身だから、残された財産は婚約中だったエーミールのモノになはずです。
エーミールが婚約破棄を口にしようとも、王家が認めなければ破棄されたりはしませんからね。

ソルトーン侯爵だって聖銀鉱山が手に入るのなら、どのような手段だって使いますし、父上もあらゆる裏工作を行ってくれます。
私がエーミールと結婚して、あの聖銀鉱山を手に入れられれば、この国を私の手で動かすことだって夢ではないわ!
エーミールは目障りになれば殺せばいいだけ。

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