「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集4

克全

第15話

フェルディナンドはその場で主従契約を結んでくれました。
その場で安堵のため息をつきそうになりましたが、必死で心を引き締めました。
わずかでも隙を見せるわけにはいきません。
これから学院の妨害と戦う必要があるのです。

「今からフェルディナンドの部屋を用意します。
家老に相応しい部屋を用意しなさい。
場所も私やカチュアが呼べば直ぐに来られる場所にするのです」

アレクサンダーが驚いています。
まだまだ思考が未熟です。
シャーロットが他の侍女に何か命じています。
フェルディナンドの部屋の準備のために、部屋の移動を命じているのです。
私が、カチュアとフェルディナンドの間に、間違いが起こることを望んでいると察したのでしょう。

「アレクサンダー。
フェルディナンドに内密に確認したいことがあります。
護衛は侍女に任せて、部屋の移動をしてきなさい」

「承りました」

私は騎士たちを部屋の外に出すと、カチュアに確認しました。
フェルディナンドの魔力の色が何色だったかを。
カチュアの答えは八色でした。
ここで新たな疑問と疑いが生まれたのです。
そこで今度はカチュアも侍女も部屋から出して、フェルディナンドと二人きりになり、重大な質問をしたのです。

「フェルディナンドに質問します。
自分の魔力は何色に見えますか。
いくつの色に分かれていますか?」

「十四色です。
白、黒、赤、青、緑、黄、茶、橙、藍、薄青、黄緑、紫、金、銀の十四色です」

フェルディナンドが少し動揺しています。
それもしかたがありません。
私が特別待遇しているのは明確なのです。

「フェルディナンド。
貴男の魔力は特別です。
私にはそれが分かります。
私にできり限りの、最大限の待遇にする事を約束します。
すでに主従契約を結んだからと言って、実力に相応しくない劣悪な待遇などはしません。
だから望みがあれば何でも言ってください」

「ありがとうございます!
公爵家の家老待遇にしていただけるなんて、思ってもいませんでした。
もう過分な待遇をしてくださっています。
十分な待遇を約束してくださっています。
ただできれば、研究費をたくさんお願いします」

「分かっていますよ。
我が家ならフェルディナンドの魔力をお金に変える事ができます。
利益の半分を研究費に与えましょう。
毎月金貨百枚は約束します」

「本当ですか!
ありがとうございます!
ありがとうございます!
ありがとうございます!」

私はを侍女を呼んでフェルディナンドを部屋に案内させ、カチュアを呼んで二人きりで重大なはなしをしました。

「カチュア。
貴男の婿はフェルディナンド殿に決めました。
今日からそのつもりで行動しなさい。
今までのように、多くの婿候補に愛想を振りまいてはいけません。
誤解されないように、毅然とした態度をとりなさい」

「え、あの、その、なぜでございますか?」

「フェルディナンドの魔力は伝説の聖人に匹敵します。
性格に難のある他の候補者など塵芥同然です。
絶対にフェルディナンドを婿に迎えるのです。
カチュアもフェルディナンドにひとめ惚れしたのでしょ?」

「え、あの、その、ありがとうございます。
ですが、家格の問題はどうされるのですか?
最低でも侯爵家の家格が必要なのではありませんか」

「買います。
フェルディナンドの魔力を使えば、困窮している侯爵家の養子にするくらい簡単な事です」

さあ、これからは今まで以上に忙しく危険になりますよ!

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