「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集4

克全

第11話

「やあ、初めまして、カチュア嬢。
余はアメリア皇国、アメリア皇家皇太子のヴェンツだ。
何かあれば余に聞くがいい。
困った事があれば余に相談するがいい」

「はい、ありがとうございます、ヴェンツ皇太子殿下。
何事もヴェンツ皇太子殿下に相談させていただきます」

最初の授業が終わって休憩時間になると、在校生が身分順に挨拶にやってきます。
この教室は王公教室なので、公爵家のカチュアは最下位になります。
カチュアにとっては試練の場です。
王侯貴族のマナーでは、カチュアから声をかける事は許されません。
親しい間柄になれば、在校中だけはファーストネームで呼びあう事すら許される建前ですが、あくまでも建前です。

ヴェンツ皇太子殿下は珍しいオッドアイです。
左の瞳が蒼玉のように、右の瞳が紅玉のように美しいです。
髪は輝くような金髪です。
肌は極東でしか創り出せない白磁のように美しいです。
身長は一八〇センチと長身で、引き締まった筋肉質です。
ひと言で言い表せば美丈夫でしょう。

ヴェンツ皇太子殿下は自分の魅力をよく理解されています。
いえ、理解するように教育されているというべきでしょう。
皇室は諸侯王以下の王侯貴族を支配し、大国を統治しなければなりません。
使えるモノは見た目の容姿であろうと利用するのです。
気をつけないといけない相手です。
事前に集めていた情報通りです。

カチュアはこの学院で新たな結婚相手を見つけなければなりません。
ファンテル王家を牽制できるくらいの、権力・軍事力・財力のいずれかを持っている相手を探さないといけないのです。
ヴェンツ皇太子殿下は最高の相手に見えますが、有名なプレイボーイなのです。
遊びでカチュアを傷物にされては困るのです。

基本学院は男女別の教室になっています。
当然寮や宿泊棟も男女別の敷地にあります。
ですが王公教室だけは別なのです。
公爵以上の者で、学院で学ぶものは極少数なのです。

王公族にはプライドがあるのです。
平民や下級貴族に魔力で劣ることは絶対にあってはいけないのです。
ですから魔力量に自信がる者や、事情がある者以外は留学しないのです。
家庭教師を雇って学ぶのです。
以前のカチュアがそうでした。
だから人数が少ないのが普通なのです。
この教室に二〇人のいる方が異常なのです。
もしかしたら、大陸は騒乱の時代を迎えるかもしれません。
それぞれの国内問題で済んでくれればあいいのですが……

「余はモンザ王国、モンザ王家の王太子アルドスだ。
何かあれば余に聞くがいい。
困った事があれば余に相談するがいい」

派閥争いでしょうか?
カチュアを巻き込まないで欲しいですが、そうもいかないでしょうね。

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