「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集4

克全

第5話

「刺客の持ち物を調べなさい。
出てこないとは思いますが、少しでも黒幕を確定できるものを探しなさい」

「承りました」

何とか撃退できました。
でもここで切り札の一つを使わなければいけなかったのは痛いです。
侍女が戦闘もできる戦闘侍女であることは、エイヴァとライリーなら知っていたことですから、表に出てもそれほど痛くはないです。
ですが、王太子側に知られたのは痛いです。
両者が連携していたとしたら、どうという事もないことですが、別々に動いていたとしたら、知られたくなかったです。

「アレクサンダー。
死傷した従士を領地に送り返して、新たな騎士と従士を呼び寄せてください」

「どこかで待つのですか?
はい、承りました」

アレクサンダーは一瞬疑問に思ったようですが、先ほど私が言った敵に旅程を知られているという言葉を思い出したのでしょう。
先を急ごうと、街に長居しようと、襲われるのは同じですからね。
危険度が同じなら、戦力を増強した方がいいと理解したのでしょう。

「おばあ様。
学院につくのが遅れると、我が家や国の恥になるのではありませんか?
レネオス公爵令嬢としても、ファンテル王国王太子殿下の婚約者としても、恥をかくわけにはいかないのではありませんか?」

「大丈夫ですよ、カチュア。
学院は王侯貴族を受け入れることになれています。
王侯貴族に家督争いや勢力争いはつきものです。
学院への往復で襲撃を受けるのには慣れています。
今回の襲撃も学院側は予測しています。
私も事情を話して予定通りにいかない可能性を伝えてあります。
なんの心配も必要ないのですよ」

「はい、ありがとうございます、おばあ様」

「レイラ様、カチュア様。
証拠となるものは何も持っていませんでした」

「では先ほど言ったように、負傷者を領地に戻して交代要員を送ってもらいます。
それと先ほど休憩した村と代官のいる街に、襲撃を受けたことを報告してもらい、王家に調査と援軍を依頼します。
戦える者は次の街まで向かい、そこの代官に襲撃を受けたことを伝え、王家に調査と援軍を依頼します」

刺客の黒幕が王太子だとしたら、代官が懐柔されている可能性があります。
懐柔していなくても、代官が王太子におもねって報告を握り潰す事もあります。
ですがあの馬鹿王太子の事です。
手抜かりがあると思って行動すべきでしょう。
名将を相手にするときのように、無駄を省いて戦力を温存したり、スピードを重視するのは悪手でしょう。
王太子の失敗も想定して、あらゆる手を打つべきですね。

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