「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集4

克全

第3話

「おばあ様、本当にこれでよかったのでしょうか?
妃教育を放り出して留学するなんて、王太子殿下の婚約者としての責任を放棄する、貴族令嬢にあるまじき行為ではありませんか?」

「そんな事はありませんよ。
留学も立派な妃教育の一環です。
だからこそ国王陛下のご裁可がくだったのです」

「そう、ですね。
この留学は国王陛下が認められたのですものね。
おばあ様が直談判されたとはいえ、お認めになられたのですよね」

カチュアには心配をさせてしまっています。
負担もかけてしまっています。
ですが、命には代えられません。
馬鹿王太子と腐れエイヴァの手の届かない所まで逃げなければなりません。
息子のリアムが当てにできない以上、私がカチュアを護らなければ!

それにしても、国王陛下も中途半端です。
カチュアと馬鹿王太子の婚約を解消してくれれば、なんの心配もいらないのに。
まあ、あの馬鹿王太子が王位を継ぐとなったら、支える王妃には優秀な者を配したいのは親心でしょう。
ですが、あの馬鹿王太子を押し付けられるカチュアは不幸過ぎます。
国王陛下が逆らえないくらい力をもった皇族か王族を、カチュアの婿に、大陸連合魔法学院で探さなけれななりません!

「レイラ様、カチュア様。
不穏な雰囲気がいたします。
いざという時の準備をお願いします」

「分かりました。
私たちの事は気にせず存分に働いてください」

護衛の騎士隊を率いるアレクサンダーから緊迫した気配がします。
彼も私が広めた噂を知っています。
私から直接話してもいます。
馬鹿王太子と腐れエイヴァの刺客が襲ってくるかもしれないと。

内心ではぼけ老人の戯言と笑っていたかもしれません。
ですが実際にこうやって襲撃を受ければ、驚愕して当然です。
まあ、まだ襲われてはいませんが、襲撃者の気配を感じたのですから、驚愕してしまったのでしょう。
ですが、事前に警告していたことで、奇襲を受ける心配だけはありません。

「レイラ様。
いざという時は私が身代わりになります」

「カチュア様の身代わりは私が務めさせていただきます。
お二方は馬車から出ないようにしてください」

侍女たちが気丈に申し出てくれています。
長年私に仕えてくれている、信用信頼できる者から選抜した侍女たちです。
腐れエイヴァの寝返る者は一人もいないと、信じられる者たちです。

「大丈夫ですよ。
貴女たちを無為に死なせはしません。
私が必ず護ります。
いえ、騎士団の者たちが護ってくれます。
だから私たちは足手まといにならないように、騎士団の者たちの指示に従いましょうね」

ああ、公爵家令嬢に相応しい気丈な振舞い!
こんな立派に育ったカチュアを死なせはしません!

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