「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集4

克全

第16話

「オリビア、オリビア、オリビア!
よかった、よかった、本当によかった!
無事でよかった、オリビア」

「心配してくれてありがとう、カデン。
でも大丈夫よ。
なんの心配もいらないわ。
ハクちゃんが助けてくれたの」

「……そうか、それはよかった。
たけど、なんで近づけないんだ?」

「なぜかしら?
ウフフフフ、ハクちゃんが嫉妬しているのかもしれないわね。
ハクちゃんが認めてくれたら近づけると思うわ」

恥ずかしくて、少し意地悪な事を言ってしまいました。
でも本当はうれしいのです。
昨日夢で見たのです。
カデンが五カ月も前から、私を探してここで戦ってくれていたことを。
王家の命じた一カ月が過ぎて直ぐに、魔境と呼ばれているここに命がけで入ってくれたことを、五カ月間一度も逃げることを考えず、ただひたすら私を探し続けてくれたいたことを!

今の私は、カデンの想いにこたえてもいいと思っています。
カデンと結婚してもいいと思っています。
でも、まだ少し恥ずかしいのです。
その恥ずかしさから、カデンをからかってしまいます。
だから、ハクちゃんの嫉妬は助かりました。
それに、カデンにはやってもらわなければいけないことがあります。
神様のお告げの手伝いをしてもらはなければなりません。

「分かったよ。
オリビアと俺は神様に試練を与えられていたのだろう。
いつでも殺せるのに、殺さずに嬲られていたが、あれは鍛えてくれていたんだ。
聖女のオリビアを蔑ろにする王や貴族どもに思いしらせるために、俺を鍛えてくれていたのだろう」

カデンが手伝いを約束してくれました。
でもカデンだけではやれることは限られています。
単に戦うだけ、神の教えを蔑ろにする者に罰を与えるだけなら、カデン一人でもできますが、民を救うには多くの人手がいるのです。

大切なのは食糧です。
王家や貴族の酷い搾取で、民は食うや食わずの生活をしています。
いえ、ほんの少しの不作で、餓死する者が数多くいるのです。
だから、カデンに頭領になってもらって、自由騎士や傭兵を集めてもらおうと思ったのです。
いえ、集めるように神のお告げがあったのです。

今のところこの聖域に入れるのは私とカデンだけです。
夢のお告げにそうありましたから間違いありません。
ですが聖域の境界ギリギリに人を集め、私が魔力で刈り集めた穀物を、同じく魔力で運べばいいのです。

穀物自体も私の魔力で促成栽培が可能です。
刈り取りも脱穀も一度に大量に可能です。
ですが、麦藁から俵を作るの無理です。
そのような細かい作業を、同時に莫大な量をこなすことはできないのです。
だから人手を集めてやってもらうことにしたのですが、最初の資金が問題でした。


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