「ざまぁ」「婚約破棄」短編集

克全

第2話

「リドス公爵家令嬢ダイアナ。
両親の証言で王太子がかけた妹虐待の疑いは晴れた。
だが、だからといって、王太子殺害の罪は許されない。
本来なら死刑とするところだが、正義と戦いを司る闘神様の聖女を死刑にするわけにもいかない。
そこで罪一等を減じ、王国追放刑とする。
ありがたく思うように」

国王の裁きにありがたいところなど全くありません。
正義と戦いを司る闘神様が降臨され、天罰をくだされた行いを、追放刑とするのは国王の不遜としか言いようがありません。
ですが、この国の人間を実際に支配しているのは国王です。
神殿であろうと聖女であろうと、現世の政には介入できないのです。

ですがどうしても気になる事があります。
妹のカミラが王族席についているのです。
誰をどう利用すれば、チャールズ王太子と婚約もしていなかったカミラが、チャールズ王太子の未亡人と認められるのですか!

父リドス公爵の権力をなりふり構わず利用すれば、可能かもしれません。
ですがカミラの身持ちの悪さを知っており、腹の子の父親がチャールズ王太子ではないと思っている父が、そのような真似をするわけがありません。
リドス公爵家を守るために、理由を話す事はできないでしょうが、徹頭徹尾反対したはずです。

カミラの実の父であるリドス公爵が反対しているのに、婚約もしていなかったカミラをチャールズ王太子の婚約者だと認め、腹の子を疑う事もなく王族に加えた人間がジョージ国王ならば、吐き気を催すような現実ですが、まだ王家に不義の血が入るわけではないので、一面安心はできます。
正義から言えば、絶対に許せない不義ですが、それは王家が腐っているだけです。

ですが、国王が愚かで騙されているのなら、絶対に正さないといけません。
公爵家の令嬢としても、闘神様の聖女としても、見逃すことなどできません。
国王に正面から逆らうわけにはいきませんが、黙って従う事はできません。
なんとしても、追放刑を回避して、この国に留まらないといけません。

「恐れながら国王陛下。
あの時の私には闘神様が降臨されておられました。
それを追放刑に処すという事は、闘神様を罪に問うことになります。
本当にそれでよいのでございますか?
それでは闘神殿と正面対決することになりませんか?」

「構わぬ。
例え闘神殿と戦うことになろうと、王太子を殺した者に何の罰も与えないわけにはいかん。
そんな事になったら、王家の権力が揺らぎ、他国や神殿に付け入る隙を与えてしまうことになる。
これ以上抗弁すれば、闘神殿との全面対決も辞さぬぞ!」

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