「ざまぁ」「婚約破棄」短編集

克全

第3話幽閉初日2

「やってしまわれたのですね。
仕方がない事とはいえ、これで解放される可能性がなくなりましたよ」

苛立ちます。
吐き気がするほど腹が立ちます。
自分は良識があるような口ぶりですが、こいつも腐れ外道です。

「人間のような口をきくのではありません。
色情狂と取り巻きをここに通せば、私が襲われることは、馬鹿でもわかります。
それなのに護衛のお前達は通しましたね。
我が身可愛さに、守護神様の聖女を色情狂の餌食にする。
恥を知りなさい!
いえ、無駄でしたね。
お前達に恥じる心などないですね。
お前達のよう恥知らずを育てた両親と、恥知らずの血を受け継いだ子供の顔が見てみたいものです。
さぞ醜悪な顔をしている事でしょう」

私の言葉を聞いて、塔の監視と護衛を務める騎士や徒士の隊長が顔を歪めます。
逆恨みでしょうか?
この者達を敵に回せば、塔での生活は厳しいモノになるでしょう。
ですが、貴族の誇りを捨てる事などできません。
守護神様の聖女としての矜持があります。
まあ気にしても仕方がありません。

「とっとと、この色情狂と佞臣どもを連れて行きなさい。
汚らわしくて耐えられません」

私の幽閉されている塔は結構高く広いです。
本来なら敵の来襲を見張るための塔ですから、王城でも一二を争う高さの塔です。
その最上階と直ぐ下の階が私が使える場所です。
その最上階部分に色情狂と取り巻きが倒れています。
死んではいませんが、全員両目と喉が潰れ、四肢があらぬ方向に曲がっています。

「そのように高慢だからこのような事になるのですよ、公爵令嬢様!
令嬢様こそ自分の言葉に責任を持たれていただきますよ。
誇り高い王国近衛騎士にこれほどの暴言を吐いたのです。
ただですむとは思ていないでしょうね」

「脅しですか?
それとも賄賂の要求ですか?
完全武装の近衛騎士だからといっても、この惨状を見てまだ私に勝てる気ですか?
家柄優先で、ろくに鍛錬もせずに近衛騎士に選ばれた玩具の騎士殿」

「おのれ、おのれ、おのれ」

「剣に手をかけましたね。
それは私を斬るというのですか?
黙って切られる私ではありませんよ」

怒りで顔を真っ赤にして、全身プルプル震えていた隊長ですが、本気で睨みつけてやったら、視線を外してしまいました。
本当に情けなさすぎます。
この程度の胆力と実力で近衛騎士に選ばれ、配下を預けられるのですから。

「クズクズするな!
なにをぼさっとしている!
直ぐに王太子殿下と貴族様達を控室にお連れしろ!
お前は急いで侍医の方々に来ていただけ!」

隊長が私に怯えたのを隠すように、配下を怒鳴り散らしています。
小人としか表現しようのない屑ですね。
でも配下の中には、いい眼をしている者もいます。
この者なら本当の事を教えてくれるかもしれません。
間違った情報で正しい判断などできませんから。

「ちょっと教えてください」


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