「ざまぁ」「婚約破棄」短編集

克全

第10話

「分かった、分かった。
アルチュールを殺したのが余の命令だと、認めるしかないようだな。
だがガブリエルとローズの結婚は認められん。
テンプル公爵家とマルタン公爵家の同盟は絶対に認められん。
大公国を建国するなど認めんぞ!」

「それは構いませんが、私はローズ嬢を弟子にすると約束しました。
その約束を破る事はできません。
国王陛下に逆らって結婚するとは言いませんが、ローズ嬢を弟子とすることは認めてもらいます」

ああ、ガブリエル様と結婚できると思ったのに!
国王のせいでダメになってしまいました。
腹立たしいです!
国王に憎しみを感じてしまいます!
先ほどガブリエル様に教えていただいた呪いの術式で、国王を呪い殺してしまいそうです。

「ローズ嬢。
ローズ嬢には礼をしなければいけないな。
出来損ないのアルチュールを殺してくれた礼を。
愚かなアルチュールにより傷ついたローズ嬢には、代償として新たな王太子の婚約者となってもらう。
第二王子ジュールの婚約者になってもらう」

「嫌です!」

ああ、反射的に断ってしまいました。
これは危険な事だと分かります。
いまはギリギリの状況なのです。
私の返答ひとつで、戦争が起こるかもしれません。
それを回避するために、国王がこの場で、ガブリエル様と私を殺そうとするかもしれません。

ですが嫌なのです。
絶対に嫌なのです。
今の私にはガブリエル様しか見えません。
貴族の義務であろうと、政略結婚など絶対に嫌です。
ガブリエル様以外と結婚するなど考えられません。
ですが、ガブリエル様も貴族です。
戦争を避けるために、私とジュール王子の結婚を勧めるかもしれません。
ここはガブリエル様と国王を納得させるだけの理由を作らないといけません!

「私の心からは、王家に対する忠誠心も信用も失われています。
このような状態で、また王族との婚約などできません。
ジュール王子に、同じような仕打ちをされないかと疑っています。
それに、ジュール王子には婚約者がいたのではありませんか?
その令嬢と実家の恨みは、私が買うことになるのですよね?
この婚約は、アルチュールを殺した私への報復ではないのですか?
私を貴族に殺させるために、国王陛下が仕掛ける謀略ではないのですか?
ガブリエル様はどう思われますか?
ガブリエル様は私を見捨ててしまわれるのですか?」

「国王陛下。
ローズ嬢はこう言われていますが、どうなんですか?
私もジュール王子に婚約者がいるのを知っています。
これが国王陛下の報復だという考えにも、うなずけるところがあります。
私はさらに国王陛下に対する不信を持ちました。
お答え願います!
これはローズ嬢の対する報復ですか!」


コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品