「ざまぁ」「婚約破棄」短編集

克全

第9話

「アルチュール王太子殿下の行状が、国の行く末を危うくすると心配された国王陛下が、王太子殿下の婚約者であったローズ嬢に、内々で王太子殿下の成敗を命じられていたことにするのです。
王太子殿下にすり寄り、国を傾けることになっても私利私欲に走っていた重臣たちは処刑なされて、領地は王家の直轄領にされればいいのです。
テンプル公爵家とマルタン公爵家は国王陛下を支持いたします」

「その代わり、アルチュールを殺したことは不問にしろというのか?
少々図々しいのではないか?」

「そう思われるのでしたら、国内貴族を動員されて、我がテンプル公爵家とローズ嬢のマルタン公爵家を討伐されればいいのです。
もちろん私たちは手を携えて正々堂々戦わせていただきます。
国内貴族には味方になるように説得します。
当然ですか味方になってもらう代償は、攻め取った王家の領地ですが、それで構わないのですね?」

ガブリエル様が国王陛下を脅迫しています。
今まで王太子が多くの貴族から恨みを買う事をやっていました。
しかも今回の件で、巻き込まれた貴族からはさらなる恨みを買いました。
本人は死んでしまっていますから、国王陛下の対応次第では恨みを水に流すことも可能でしょう。

いえ、今回の件では私に恨みを転嫁することも可能です。
しかしそれは、ガブリエル様が私の味方をしていなければの話です。
テンプル騎士団で勇名をはせておられ、国内外の貴族の信望を一身に得ておられるガブリエル様が私の味方をしてくださると、悪いのは王太子であり王国になります。
いえ、それを見過ごしていた国王陛下が真の元凶という事になります。

しかもテンプル公爵家とマルタン公爵家が連合して王家に戦いを挑むとなれば、王家に勝ち目があると考える貴族は少ないでしょう。
本当はマルタン公爵家の家臣団は壊滅しているのですが、まだそんな情報は貴族には流れていません。
ほとんどの貴族が王家を見捨てて、テンプル公爵家とマルタン公爵家の連合軍に味方するでしょう。
国王陛下はこの状態でどんな決断をくだすのでしょうか?

「ガブリエル。
貴公はローズ嬢と結婚でもする心算か?
政略結婚をして、王家に対抗するつもりか?
いや、王家を滅ぼして新たな国を建国するつもりか?」

「国王陛下の決断次第です。
ローズ嬢が決断してくれるのなら、政略結婚をしてテンプル公爵家とマルタン公爵家を統一し、大公国の建国を宣言して、デュボア王国から分離独立するのも一つの方法です」

ああ、ガブリエル様と結婚できるのですか?
政略結婚でも構いません!
大公国を建国するための方便でも構いません!
ガブリエル様と結婚できるのなら、なんだって受け入れます!


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