「ざまぁ」「婚約破棄」短編集

克全

第5話

「私はテンプル公爵家のガブリエルだ。
そんな事よりも、次は魔血晶を作るぞ。
魔晶石の材料に、自分の血と本物のマンドレイクを使う。
その時に自分の血にローズの心の中にたまっている恨み辛みと憎悪を込めるんだ」

ガブリエル様の言う通りに作りました。
今の自分が醜い姿なのは自覚しています。
こんな姿をガブリエル様に見られたくないと思ったのです。
こんな気持ちになったのは生まれて初めてです。
私は恋してしまったのでしょうか?

魔晶石に続いて、魔血晶も数多く完成しました。
ガブリエル様は、魔皮紙と魔血晶を組み合わせる方法を教えてくださいました。
こんな方法はリュカの膨大な知識にもありません。
ガブリエル様はいったいどれほどの知識をお持ちなのでしょうか?

「怒りがおさまってきたようだね。
今まで作ったものは魔法袋に入れておきなさい。
なに?
魔法袋を持っていないだって?!
それを先に言いなさい!
直ぐに魔法袋を作るよ」

ガブリエル様は私を攻めるような事を口にされましたが、必要なかったのです。
私には何もなかったのです。
魔法袋に入れなければならないほど大切なモノなどなかったのです。
母や兄の遺骨すら残っていないのです。
金銀財宝など、私には何の価値もありません。
そもそも私に金銀財宝など与えられていませんが……

「動くな!
近衛騎士団だ!
王太子殿下弑逆の罪で逮捕する!
逆らえば斬る!」

「愚か者!
今頃やってきて、ようやく治まった怒りを再燃させるか!
テンプル公爵家の名のもとに、ガブリエルが命じる。
下がりおろう!
下がって今回原因が何であったか、愚かな注進をした貴族どもを尋問しろ!
これ以上私を怒らせたら、テンプル騎士団団長として王家に物申すぞ!」

突然現れた近衛騎士団の理不尽な言葉に、せっかく治まっていた怒りが再燃し、バチバチと魔力が漏れ始めましたが、ガブリエル様が愚かな近衛騎士団を一喝してくださるのを聞いて、嘘のように怒りが治まりました。

逆に近衛騎士団は、最初は怒りに真っ赤になってガブリエル様を睨んでいました。
しかしテンプル公爵家を聞いて真っ青になり、テンプル騎士団と聞いてガタガタと震えだしました。
そう、あのテンプル騎士団です。
血統だけで選ばれた、張子の虎のような、見せかけだけの騎士団ではないのです。
王家に権力を笠に着て、平民に乱暴狼藉を働くだけの近衛騎士団とは違うのです。

「さて、屑どももいなくなったことだし、我々はなすべきことをしよう」

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