「ざまぁ」「婚約破棄」短編集

克全

第3話

「今回の話を真実にするよい方法だと?!
欲張り過ぎは鼻につくぞ!
だがまあいい。
話だけは聞いてやる。
だが気に喰わない話なら先ほどの狩猟権はなしだ。
現金だけしか与えんからな!」

「それは御情けない。
どうか浅学非才の家臣に温情を賜りますように。
それで先ほどの話ですが、スカーレットを奈落の魔獣に輿入れさせて、魔獣の怒りを治めるのです。
クルー伯爵家が奈落の狩猟権を与えられないと、話の筋が通らないと思うのですが……」

「わっはっはは!
これは愉快だ!
よくぞ思いついたな!
確かにパーカーの言う通りだ!
スカーレットを奈落の魔獣に輿入れさせておいて、クルー伯爵家に奈落の狩猟権を与えないというのでは、確かに話の辻褄が合わんな。
分かった。
愉快な話を聞かせてくれたから、奈落の狩猟権をくれてやる。
だがクルー伯爵家に、奈落で狩りができるような剛勇な家臣がいるのか?」

「残念ながら今はおりません。
ですが魔境での狩りを続ければ、いつの日か、奈落で狩りができる家臣が育つかもしれません。
私は浅学非才の身ではありますが、子孫の中に武勇の者が生まれてくるかもしれません。
家臣の家に、よき婿が来てくれるかもしれません。
後々王家の御役に立てる家に成れるかもしれません」

「……さきに魔境に冒険者や商人に介入させるのは禁止した。
奈落も同じだ、冒険者や商人を介入させるのは禁止だ。
一族や家臣に迎えた婿や嫁も禁止しようと思っていたが、認めてやる。
だが養子や養女はだめだ。
そのような抜け道を使ったら、狩猟権を取り上げる。
だが本当の嫁や婿養子なら、認めてやる」

「過分なご厚情感謝にたえません」

先ほどから、父と王は何を話しているのでしょう?
父が母上や私を売り飛ばすような卑怯者であることに変わりはありません。
ですが、このような王に仕えるのなら、父のような生き方しかできないのかもしれません。

良識を持って敬虔に生きようとすれば、家を潰されてしまうのかもしれません。
だからといって、父を許す気にはなれまませんが、仕方のないことだったのだと思い、諦める事はできるかもしれません……

「さて、スカーレット。
そなたの身は父に売られた。
どんな気持ちだ?
父親に売られるというのは?
悔しいか?
哀しいか?
それとも情けないか?」

王が私を見てうれしそうにニタニタと笑っています。
抵抗できない立場の者をいたぶって喜ぶ性癖あるのでしょう。
ここは哀しそうに悔しそうにした方がいいのかもしれませんね。
生き延びるためには、ここで王を怒らせない方がいいでしょう。
ここで騎士に囲まれるよりは、奈落に落とされた方が生き延びられる可能性があります!

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