「ざまぁ」「婚約破棄」短編集

克全

第10話

「まあ!
この子達は何者なの?」

「この子達はブラウニーという家事を助けてくれる精霊よ。
お母さんの御世話をしてくれるわ」

「まあ、まあ、まあ。
カチュアは悪い子ね。
お母さんを年寄り扱いするの?」

「ふふふふふ。
そんなことはないわ。
でも二人きりでは色々忙しいのよ。
山羊や羊、馬や牛、鶏や鴨の世話はしなければいけないし、田畑も耕さなければいけないもの」

「まあ、まあ、まあ、とても忙しいのね。
でもカチュアの事だから、それも手伝ってくれる子がいるのではなくて?」

「あら、なんでわかったの、お母さん」

「だって、カチュアは魔導書を読んだり魔道具を作るのが大好きだもの。
家事や農作業なんてするわけがないわ」

「さすがお母さんね。
私のことは何でもお見通しなのね」

「それはそうよ。
私はカチュアのお母さんだもの」

本当に幸せです。
誰に邪魔されることなく、何の心配もせずに、母上と二人のんびりと暮らせます。
私に晴耕雨読はむりだけど、晴れた日には魔法の実験をして、雨の日には魔導書を読み魔道具を作る。
そんな生活なら私にもできます。

ブラウニーは少々癖があって、付き合い方は難しいけれど、服が欲しいブラウニーは沢山いるから、入れ代わり立ち代わり来てくれればいいのです。
それに精霊はこの子に限らないのです。
この世界にはまだまだ人に知られていない精霊がいるのです。
今は母上が驚かないように人に近い容姿の精霊に手伝ってもらっているけれど、母上が精霊に慣れてくれたら、キキーモラのような獣に近い精霊に手伝ってもらうこともできます。

畑仕事や遊牧は、カッパやヤマワラワが手伝ってくれます。
むりに極東の精霊を連れてこなくても、地風火水の精霊に手伝ってもらえば大抵のことは簡単に片づけてくれます。
五獣や五竜、五麟に頼むと大ごとになるけれど、やってやれないことはないの。
お母さんが許してくれるのなら、スケルトンやゴーレムを使ってもいいのです。

「それにしてもカチュア、ここは二人で暮らすには大きすぎるのではなくて?
いずれはカチュアの旦那様や子供達で増えるとは思うけれど、それにしても、ローレン侯爵家の屋敷より大きく広いのはやりすぎだと思うのよ」

「お母さんの言うことはもっともだと思うのだけれど、ブラウニー達が広い方がいいと言ったのよ」

「まあ、嘘を言ってはいけないわ。
カチュアの嘘は直ぐに分かるのよ」

「え?
何故なの?
何か癖でもあるの?」

「うふふふふ。
それは内緒よ。
正直に言いなさい」

「お母さんには敵わないわね。
正直に話すと、造っていたら面白くなっちゃって、ついついやりすぎちゃったの」

ああ、とても幸せ!


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