「ざまぁ」「婚約破棄」短編集

克全

第6話

「御嬢様。
盗賊達が攫っていた女子供を救出したしました。
いかがいたしましょうか?」

「サリバン。
御嬢様が助けないといけない状態なのですか?」

「待ちなさい、ウルスラ。
私の事を心配してくれるのはうれしいですが、不幸な目に会った人を見捨てる訳にはいきません。
馬車で家まで送ってさしあげましょう。
ここに連れてきてください」

「申し上げ難い事ですが、盗賊達に攫われた女子供です。
御嬢様に会うのが恥ずかしいと思われます。
ここは修道女達に任せるべきだと思います」

「そうでしたね。
私の気配りが足らなかったようです。
ターニャ達に任せましょう。
あ、でも、一台で大丈夫ですか?
シキルナ達の馬車に戻ってもらいますか?」

「それは大丈夫です。
女子供は天井にも御者台にも後部警護台にも乗せられます。
シキルナ殿達は少し先で停車してくれています。
馬車を動かす前に、私が先を行くシキルナ殿達に知らせに走ります。
追い付いたら弱っている者を中に入れます」

「そうですか。
それならいいのですが、無理をさせてはいけませんよ」

「心得ております。
御嬢様の御心に負担をかけたりはしませんので、安心されてください」

盗賊達は酷いです。
恐らく王太子殿下かおべっかを使う側近が雇ったのでしょう。
その時に十分な資金を渡されているはずです。
それなのに、それで満足せずに、女子供を攫ってくるなんて、極悪非道にも程があります。

サリバンなら手加減せずに罰を与えてくれたでしょうが、私もこの手で罰したかったです。
王宮では家に迷惑をかけないように、小さくなって生きてきましたが、こうして自由になれば話は別です。

私は元々田舎者なのです。
貴族令嬢の礼儀作法は苦手だし大嫌いなのです。
犬と共に山野を駆け巡り、コスタラン馬に騎乗して草原を駆け、矢を射り獣を狩るのが大好きなのです。

害獣は狩らねば民が迷惑します。
領主や騎士には民を護る義務があるのです。
妖や獣が人の姿に化けていたとしても、見逃してはいけないのです。
人に化ける妖や獣ほど悪知恵が働き、良民を害する悪い生き物なのです。
絶対に見逃してはいけない害獣なのです。

流石に王太子殿下や貴族の公子に変化する獣は、狩るのに勇気が必要です。
王都の舞踏会では本当の王太子か、害獣が変化したのか判断できません。
ですが、そう、万が一街道に現れるようなら、間違いなく害獣が変化した、偽物の王太子と貴族公子でしょう。
尻込みせず、勇気を出して退治しなければいけません。
それがコスタラン伯爵家に生まれた領主一族の責任です。

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