「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集

克全

第3話

さて、どうやるべきでしょうか?
王家王国に処罰をさせる隙を見せるわけにはいきません。
新興商家もそのような隙がある計画には乗ってきません。
私の思いつくような方法では、魔獣を抑えるような辺境伯家の復興は不可能です。
ですが、べつに、辺境伯家にふさわしい復興が必要なのでしょうか?

「フェルガー辺境伯。
最初から辺境伯家を復興するのは諦めませんか?
それよりも、普通の開拓村。
魔獣の動向を見張ってミズン城伯に非常事態を知らせる、見張りを主体にした狩人の村を作りませんか?」

「……それでいいのかな?
まあ、王家王国の望み通り復興させても殺されるだけだが、魔獣が罪のない民を襲う事態にはさせたくないのだよ」

「フェルガー辺境伯が自分の命を捨てるのは勝手ですが、それに巻き込まれる民もいるのですよ。
その民は、いつ魔獣に襲撃させるか分からない、荒れ果てた辺境伯領を復興させた者達なのですよ」

「そうだな。
俺の処分に民を巻き込むわけにはいかないな。
処分されないように、しかも魔獣から民を護るか。
なかなかやりがいのある仕事だな」

「ええ、私もそう思います。
まずはこの状況を正直に伝えて、それでもフェルガー辺境伯領に来てくれる冒険者と狩人を探しましょう」

「そんな奇特な人間がいるかねぇ」

「いるかもしれませんよ。
まずは王都に戻りましょう。
王都に戻って、人材を集めるために、フェルガー辺境伯が活躍していた国の冒険者ギルドから人材を集める許可をもらいましょう」

「国王陛下や大臣達がそんな許可をくれるか?
彼らは俺がそのまま逃げ出すと考えるんじゃないか?」

「その可能性はあります。
でも国王陛下も大臣達も、表向きはフェルガー辺境伯の冒険者時代の貯金と縁故を利用するように言ったのですよね?
それをやらせなかったら、フェルガー辺境伯を処分する時に不利になります。
認めようと認めまいと、フェルガー辺境伯にとっては、裁判の時に有効な反論材料になりますから、一つ積み上げておきましょう」

「カサンドラは意外と知恵者なんだな。
俺は武闘派の修道女だと思っていたのだが」

「確かに私は武闘派の修道女です。
その事に間違いはありませんが、いずれは村を出てトール神様を布教する事は、生まれた時から決められていた事です。
学べることは全部学びましたから」

「それは助かるな。
だったら次の手はどうするんだ?」

「それは王家王国がどのような手に出るか分かってからにしましょう。
今から考えると余分な事まで予測しなければいけません。
それは無駄で、そんな時間があるなら狩りをして食糧と資金を増やしましょう」

「やっぱり武闘派だ」

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