「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集

克全

第21話20日目の出来事

国内の混乱は徐々に激しくなっていった。
エドワド王太子がモドイド公爵家に保護され、領都に居を定めて国内の再統治に力を入れるという情報が流れれば、普通なら多少は民心も落ち着くのが普通だ。
だが、ロナンデル王家もモドイド公爵家も、完全に信頼感を失っていたので、逆に反感を買っただけだった。

いや、民は生き残るのに必死で、王国や他の貴族が何をしようと関係なかった。
民が気にかけているのは、自分が住む場所の領主の能力と税金だけ。
いや、今なら魔の跳梁跋扈だった。
実際に王都から早めに逃げ出した民は、流浪の民となっていた。
あてにしていた逃亡先が受け入れてくれた民は、その地に定住しようとしていたが、受け入れてもらえなかった民は国内を彷徨っていた。

そんな民が、王都の惨状と王侯貴族の愚かさを広めていたので、各地で領主に対する叛乱が勃発していた。
叛乱だけなら、軍事教練を繰り返した軍を保有している領主が、いつかは民の叛乱軍を鎮圧できただろうが、そこに魔による襲撃が加わるので、鎮圧に集中する事などできなかった。
魔は領主軍だろうと叛乱軍であろうと、無差別に全員を喰い殺してしまうのだ。

多くの領主地が滅んでいった。
魔と戦った領主と領主軍は、一定数喰い殺された時点で、領主軍が裏崩れ友崩れを起こして潰走、二度と立ち直れなくなって領主一族が滅ぶことが多かった。
なかには居直って、領主軍や領民をまとめて山賊や盗賊になる貴族士族もいたし、他の貴族士族の領地を襲って乗っ取る者もいた。

なかには最初から魔と戦うのを諦めて、近隣の貴族士族領を襲って乗っ取る領主もいたが、そんな領主も最後は同じ末路だった。
近隣の領地を奪っても、直ぐに魔が襲いかかってくるのだ。
直ぐにまた奪った領地からも逃げ出すことになる。
結局は国を捨てて他国に逃げ出すしかなかった。

一方魔は緩くなる結界から続々と出てくる。
それだけではなく、人間を食べて力をつけた気体の魔や液体の魔が、分裂して増殖するので、倍々と魔が増えていく。
急速に魔による被害が増え、魔の侵攻速度も速くなっていた。

だが、シャロンのお願いで龍神が創り出した龍神鱗兵が護っている村や街は、魔の襲撃を完全に撃退していた。
今の結界を抜けだす程度の魔では、龍神鱗兵の足元にも及ばず、一撃で滅することができる状態だった。
だが魔を滅すれば滅するほど龍神鱗兵の魔力は失われ、いずれただの鱗に戻ってしまうので、龍神は魔力補給用の龍神鱗兵を後援部隊として送ることになった。

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