「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集
第14話10日目の出来事
運が悪かったのかもしれない。
アメーバーに喰われるの順番が狂えば、全てが変わっていたのかもしれない。
先にエドワド王太子とモドイド公爵がアメーバーに、いや、なんでもいい、魔に殺喰い殺されていれば、生き残ったロイリダ国王はなりふり構わずシャロンに詫びて、王都に戻って来てもらっただろう。
そうすれば、内心どれほど嫌でも、守護龍は戻って来ただろう。
だが運命はロナンデル王国に過酷だった。
それが守護龍に見捨てられるという事なのかもしれない。
守護龍に見捨てられた国に幸運など訪れないのかもしれない。
ロイリダ国王とエルメラ王妃を含めた、多くの女性王族と未成人王族が暮らす後宮を、アメーバーの群れが襲った。
戦闘侍女が戦い、侍女が身を挺して庇ったが、無駄だった。
守護龍がいなくなって時間が経つほど、魔を、災厄を封じていた結界は弱くなる。
当然徐々に強く大きい魔がこの世に現れる。
封印が薄く粗くなっている事に気がついた魔は、境界線に集結している。
そしてわずかな隙間から出られる魔、気体の魔と液体の魔が大量に現れた。
それが今の現状だった。
「今は国家存亡の一大事である。
魔に魅入られた都を捨て、新たな都に遷都する。
皆ついてくるように。
遷都に必要な費用は民から臨時徴収する。
この国家存亡の時に、税を払いたくないと逆らうような愚かな民は、皆殺しにして構わない」
狂気の沙汰だった。
高貴なる義務を負うはずの王族が、魔を退治するのではなく魔から逃げ出すのだ。
王太子の信望が地に落ちて当然だった。
まあ、既に信望など欠片も残っていなかったが。
今宣言している謁見の間には、逃げる場所すらない、没落貴族士族がいるだけだ。
逃げ出せる領地や縁故がある貴族士族は、とうに王家を見捨てて王都から逃げ出していた。
遷都の行列は長蛇の列となっていた。
王都に残っていた民を強制徴募して、王城や王宮にある財宝の全てを、新都に運ぼうとしていたのだが、給料どころか、ろくに食糧も与えなかった。
税金のように、自弁で働けばいいというのがエドワド王太子の考えだった。
だがそんな事は不可能だった。
王都に残っていた民は、逃げる先のない者、逃げ出せるだけの金も食糧もない者、逃げる体力のない者だけだった。
多少でも金や家財があったり、自力で生きられるだけの体力がある者は、王都を逃げ出した後だったからだ。
遷都の行列は、王都を出た時から死屍累々の死の行列だった。
体力のない者から斃れていった。
わずかで体力が残っていた者は、運ばされている財貨を持って逃げようとした。
このまま野垂死にするのも、警備の兵に斬り殺されるのも、死に変わりはないから、僅かな可能性に賭けて逃げようとした。
地獄絵図だった。
アメーバーに喰われるの順番が狂えば、全てが変わっていたのかもしれない。
先にエドワド王太子とモドイド公爵がアメーバーに、いや、なんでもいい、魔に殺喰い殺されていれば、生き残ったロイリダ国王はなりふり構わずシャロンに詫びて、王都に戻って来てもらっただろう。
そうすれば、内心どれほど嫌でも、守護龍は戻って来ただろう。
だが運命はロナンデル王国に過酷だった。
それが守護龍に見捨てられるという事なのかもしれない。
守護龍に見捨てられた国に幸運など訪れないのかもしれない。
ロイリダ国王とエルメラ王妃を含めた、多くの女性王族と未成人王族が暮らす後宮を、アメーバーの群れが襲った。
戦闘侍女が戦い、侍女が身を挺して庇ったが、無駄だった。
守護龍がいなくなって時間が経つほど、魔を、災厄を封じていた結界は弱くなる。
当然徐々に強く大きい魔がこの世に現れる。
封印が薄く粗くなっている事に気がついた魔は、境界線に集結している。
そしてわずかな隙間から出られる魔、気体の魔と液体の魔が大量に現れた。
それが今の現状だった。
「今は国家存亡の一大事である。
魔に魅入られた都を捨て、新たな都に遷都する。
皆ついてくるように。
遷都に必要な費用は民から臨時徴収する。
この国家存亡の時に、税を払いたくないと逆らうような愚かな民は、皆殺しにして構わない」
狂気の沙汰だった。
高貴なる義務を負うはずの王族が、魔を退治するのではなく魔から逃げ出すのだ。
王太子の信望が地に落ちて当然だった。
まあ、既に信望など欠片も残っていなかったが。
今宣言している謁見の間には、逃げる場所すらない、没落貴族士族がいるだけだ。
逃げ出せる領地や縁故がある貴族士族は、とうに王家を見捨てて王都から逃げ出していた。
遷都の行列は長蛇の列となっていた。
王都に残っていた民を強制徴募して、王城や王宮にある財宝の全てを、新都に運ぼうとしていたのだが、給料どころか、ろくに食糧も与えなかった。
税金のように、自弁で働けばいいというのがエドワド王太子の考えだった。
だがそんな事は不可能だった。
王都に残っていた民は、逃げる先のない者、逃げ出せるだけの金も食糧もない者、逃げる体力のない者だけだった。
多少でも金や家財があったり、自力で生きられるだけの体力がある者は、王都を逃げ出した後だったからだ。
遷都の行列は、王都を出た時から死屍累々の死の行列だった。
体力のない者から斃れていった。
わずかで体力が残っていた者は、運ばされている財貨を持って逃げようとした。
このまま野垂死にするのも、警備の兵に斬り殺されるのも、死に変わりはないから、僅かな可能性に賭けて逃げようとした。
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