「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集

克全

第17話

「それは違う!
私はセイラを幽閉しているわけではない。
愛し護っているだけだ。
だからもっと会いたいのだ。
もっと側にいたいのだ。
だが皇太子としての政務がある。
セイラを皇后にするためにも、今迄不在にしていた分動かねばならん。
だから我慢してくれ。
魔術解説書は届けよう。
私の持っている物を渡す。
大陸連合魔法学院からも取り寄せている。
だから後宮で待っていてくれ」

「分かりました。
皇太子殿下のおられないところでは、男性と会わないようにします。
ですが非常時には会いますよ。
男性の刺客が忍び込んでくると、会いたくなくても会うことになります。
万が一騎士団や徒士団が襲ってきたら、逃げ出さなければいけません。
皇太子殿下が申されていたように、皇太子の座が不安定なのでしょ?
私を狙う者が現れるかもしれません。
分かっていただけますよね?」

「……分かった。
非常時は別だ。
私は幽閉しているのではなく、セイラを護っているのだから。
逃げ出さなければいけない時にまで、男性に会うなとは言わん」

嫌々なのが露骨に表情に出ていますが、それでも認めてくれました。
愛されているのを利用すれば、とても有利に話を進められます。
これからも限界を超えないように注意しながら、交渉していきます。
でもまだ限界にはきていませんね。
もう一つ要求しましょう。

「皇太子殿下。
私はもっと皇太子殿下の側にいたいです。
殿下が私を皇后にしようと動いてくださってるのは、とても感謝しております。
ですがそのために一緒にいられないのは辛いです。
私に手伝えることはありませんか?
一緒にやれる政務や工作はありませんか?
私が殿下の側にいた方が殿下の正室として認めてもらえるのではありませんか?」

まるで百面相です。
私の言葉に一喜一憂されています。
私が側にいたいと口にすると、とろけるような笑顔を浮かべました。
ですが直ぐに、厳しい表情に変わって悩みだします。
私を他の男に会わせたくないのが一目瞭然です。
私と一緒にいたい思いもあり、悩んでいるようです。

私が殿下の政務を手伝いたいというと、またもとろけるような笑顔を浮かべます。
でもまた直ぐに、厳しい表情に変わって悩みだします。
コロコロと表情が変わりますが、急に引き締まった顔で固まりました。
私を皇后にしたい想いが強かったのでしょう。
私の眼には、一緒に政務をする事を選んだように見えたのですが、結果はどうでしょうか?

「分かった。
全ての政務を一緒にするとは約束できないが、できる限り一緒にいるようにする。
約束する。
だからもうしばらく今迄通りでいてくれ」


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