「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集

克全

第7話

「人材には限りがある。
限りのある人材を有効に使うのが上に立つ者の役目だ。
この者たちが悪事に加担したのは確かだ。
騎士や徒士として使うには色々と問題があるだろう。
だが犯罪者奴隷として使う事はできるし、心を入れ替えて務めるのなら、騎士や徒士に復帰させることも不可能ではない」

醜い顔で表情は読み難いですが、冷徹な判断だけで助命しようというのではないようですね。
私には心に慈愛があるのが分かります。
こういう王子を生き残らせるのが神に仕える者の役目ですね。
死力を尽くしてあげましょう。

「その辺は大丈夫です。
聖の魔法陣ですから、神による制限があります。
無暗に命を奪うことなどできません。
聖の魔法陣で命を奪われるのは、神様でも救えないような悪人だけです」

「悪人は神様も許されないのか、分かった。
だがもう一つ確認しさせてくれ。
この魔法陣で生き残った悪人が、再び悪事を働き、民を害した場合はどうなる?
そこまでは神様の眼も届かないのか?」

なるほど、この国の教会は堕落していますからね。
神様の力を信じられないのでしょう。
いえ、この国だけではありませんね。
私の所属する教会も、たいがい堕落してしまっていますからね。
まあ、確かに神様もお忙しいようで、人界の隅々まで眼が行き届かないです。

「神様も忙しいので、人界の隅々までは眼が届きません
ですがその辺は、聖堂騎士の私が配慮していますよ。
この魔法陣には悪人に対する呪いが書き込んであります。
ああ、心配しなくていいですよ。
冒険者の方々の魔法陣には書いていません。
前科の有る騎士と徒士だけです。
話を戻します。
王子を弑逆しようとした騎士と徒士は、次に悪事を働いた時には、呪いが発動して死ぬことになっています」

「分かった。
エマ聖堂騎士殿の言葉を信じよう。
頼む」

王子に頼まれてしまいました。
絶対に成功させなければいけません。
ジェームズのすがるような視線も痛いです。
どれほど王子に期待しているのですか。
自分で権力を掴んで建国王になろうという考えはないのですね。

魔法陣に力が満ちていきます。
騎士と徒士が激痛にのたうちまわっています。
それだけ悪事を重ねてきたのでしょう。
今までやってきた善行と悪事を計算して、悪事の方が多ければ、激痛を与える特別製の魔法陣ですから、タップリと味わってください。

冒険者が恐怖に顔をゆがめていますね。
まあ、騎士と徒士が苦痛で七転八倒している姿を見れば、自分たちに降りかかった時の事を考えて、心配になるのも仕方ないです。
王子も苦痛に顔をゆがめています……
私が想像していた以上に強力な呪いのようですね。
この魔法陣で解術できればいいのですが……



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