「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集

克全

第16話

レベッカが絶叫を放ちます。
全身を激痛が襲っているのでしょう。
我慢してください、レベッカ。
そして頑張って耐えてください。
直ぐに魔王の呪いから解放して差し上げます!

エドアルド様に手抜かりなどありません。
レベッカが魔王に操られている可能性など先刻承知していました。
事前にいくつもの対応策を考え、装備も整えています。
だから即座に対応することができるのです。
私の役割は、魔王やマッティーア国王にエドアルド様の邪魔をさせないことです

「ちぃ!
やれ、さっさと殺せ!
いでよ、スケルトン!」

半数以上のオートヴィル王国騎士を斃しましたが、想定通り非常識な速さと力で襲い掛かってきます。
宝具の力がなければ絶対に勝てませんでした。
ですが宝具といえども万能ではありません。
何といっても中にいるのが護身術程度しか学んでいない私です。
基礎が全くできていないのです。

「パオラ、魔法を使え」

「はい!」

切り札の一枚を切る時が来ました。
宝具の力も魔力まだまだ十分残っていますが、私の体力が持ちません。
もっと鍛えておけばよかったと、今更思ってしまいますが、今そんな事を考えても詮無いことです。
今できることをやるだけです!

「光よ!」

神々から祝福された特殊な金属で作られた板金鎧の、胸甲部に埋め込まれた魔晶石を触って、神々に願いながら呪文とも言えない言葉を口にします。
数十の光り輝く魔力の矢が、魔晶石を通して私の手から生み出され、スケルトンや残ったオートヴィル王国騎士に殺到し、スケルトンは一瞬で崩れ落ちて灰になり、オートヴィル王国騎士は雷撃にうたれたように一瞬硬直した後で床に崩れ落ちました。

「おのれ、おのれ、おのれ。
いでよ、スケルトン。
いでよ、スケルトン。
いでよ、スケルトン」

信じられません!
マッティーア国王はいったいどれくらいの魔力を魔王から授かったのでしょうか?
急ぎ読んだマネル王家に伝わる文献では、魔王から得る魔力が多ければ多いほど、見返りに捧げなければならない人命が多いとありました。
マッティーア国王はいったい幾人の国民を殺したのでしょうか?
想像するだけで悪寒が走ります。

「パオラ、魔力を惜しむな!
やれるだけやって、駄目なら一旦撤退する。
レベッカは既に確保している。
何の憂いもない。
全力で戦え!」

エドアルド様の申される通りです。
エドアルド様と私は一心同体。
夫唱婦随で戦うのです。
これからはどのような戦場にも供に赴いて戦うのです。

「ギャァァァァ!」

え?
レベッカ?
もう解放されているはずなのに!

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