「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集

克全

第12話

「私は幸せ者です」

「僕も幸せだよ」

思いがけない神託に大混乱となった結婚式でしたが、いったん話が決まると後は予定通りに進められました。
国王陛下もエドアルド殿下も、直ぐに国境に赴かれると思っていましたが、御二人はしばらく王宮に残られるそうです。

相手が魔王ですから、総大将の国王陛下やエドアルド殿下にどのような魔法や呪いをかけてくるかわかりません。
総大将が敵軍と戦う前に斃れるわけにはいかないのです。
一番護りの硬い王宮内から指揮するしかありません。
そう護衛の戦闘侍女に聞かされて、正直安堵しました。

ですから、普通に初夜を迎えることができました。
王族や大貴族の宿命ではありますが、見守り役の前で契りを結ぶのはとても恥ずかしかったです。
ちゃんを契りを結べたのか、不義の子ではないのかを確認するために、夫婦それぞれの側近が契りを結んだのを確認しなければいけないのです。

幼い頃から学んできたことですが、恥ずかしいモノは恥ずかしいのです。
でもなかには全然平気な令嬢もおられます。
妹のミーアは平気だったそうです。
むしろ王太子の子供を証明するために、積極的に活用したようです。

私は緊張と恥ずかしさで、なかなか身体を開くことができませんでした。
それなのに、エドアルド殿下は怒ることもあきれることもなく、じっくりと時間をかけて私の緊張と羞恥心を溶かしてくださいました。
優しいいたわりの言葉と、愛の言葉をささやいてくださいました。

ようやく私が緊張と羞恥心から解き放たれ、エドアルド殿下をこの身に迎えられた時にも、優しくいたわるように接してくださいました。
痛みはありましたが、それに勝る充足感と喜びに心も身体も満たされ、天にも昇る幸福感に包まれました。

一度ではなく二度三度、いえ、五度も愛を確かめました。
悪魔魔王の存在が、私達を追い込んだのかもしれません。
幸福感の背中合わせに、死の恐怖があったのかもしれません。
互いの子孫を残したい、子供を授かりたいという想いがあったのかもしれません。
単なる欲望からではないのだと思います。
神様を信じていても、ままにならない人の弱さなのかもしれません。

「陛下に報告してくる。
これでパオラが子を宿しても誰に非難されることもない。
安心して妊娠して欲しい。
私は二人の間に生まれる子を心から望んでいる」

昨晩の事を国王陛下に報告するのは当然の事なのですが、とても恥ずかしいです。
見守り役に直接見られるよりも恥ずかしいです。
ですがちゃんと報告しなければいけません。
女の感でしかありませんが、子供が授かった気がするのです!

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