「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集

克全

第11話

「王太子殿下!
神託でございます!
再び神託がくだりました!」

結婚式の会場に、教会からの使者が飛び込んできました。
列席している王族と貴族が眉をひそめています。
どれほど大切な神託であろうと、王太子殿下の結婚式という、とても大切な場の雰囲気を壊すモノではないという表情をしています。

その気持ちは分からないでもありませんが、私にはそれ以上に神託は優先しなければいけないという想いがあります。
そのそも神託がなければ、私はエドアルド様に助けていただけませんでした。
神託がなければ、この国の誰一人、エドアルド様と私に結婚を認めてくださらなかったでしょう。

私にとって神託は何より一番大切にすべきことなのです。
それに、何か嫌な予感がします。
私を助けてくださった神様が、こんな日に神託をくだされたのです。
一日も遅れさせられないくらいの切迫した大事件が、神様でも予測できないような大事件が、起こったのかもしれないのです。

「よくぞ知らせてくれた。
気後れしたであろうに、恐れずに知らせてくれた。
パオラの存在を私に教えてくださった神様。
結婚をご報告させていただいた神様が、今日神託をくだされたのです。
よほど急ぎの大切な予言なのでしょう。
教会が恐れて伝えてくれなかったら、手遅れになったかもしれない。
本当によく知らせてくれた。
ありがとう!」

エドアルド様は私と同じ考えだったようです。
そう思うと、うれしい気持ちと同時に、恐怖感も増大しました。
本当に一体何が起こってしまったんでしょうか。
エドアルド様が伝令の神官から話を聞いておられます。

「すまない。
パオラより先に陛下に伝えねばならん」

「お気になされないでください。
国の大事なら当然のことでございます」

豪胆なエドアルド様が顔を厳しく引き締められ、陛下と小声で話し合われていますが、最初に陛下の表情が驚愕に歪み、今では真っ青になっています。
よほどの重大事件なのでしょう。
結婚式に集まってくれていた王族と貴族が、固唾を飲んで御二人を見ています。
普通なら隣の貴族と話したりするのでしょうが、彼らもようやく重大事件だと理解したのでしょう。

「神様がこの国の命運にかかわる重大な事を知らせてくださった。
我らを見守り神託をくだされる神様に感謝を!」

「「「「「神様に感謝を!」」」」」

私も王族も貴族も、一斉に神様に感謝を捧げました。

「オートヴィル王国のマッティーア国王が、こともあろうに悪魔に魂を売った。
悪魔に望みをかなえてもらう代わりに、多くの人を殺し捧げる契約をした。
生贄にする人間を確保するために、我が国に戦争を仕掛けるそうだ。
戦争で死んでいく我が国の民と自国の民を悪魔に捧げるというのだ!
そのような外道を許すわけにはいかん。
少なくとも我が国の民を無駄死にさせるわけにはいかん!
みな剣をとれ!
マッティーアの首をとるぞ!」

「「「「「おう!」」」」」





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