「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集

克全

第9話

私は明日エドアルド王太子殿下と結婚式を上げます。
エド様の身分を打ち明けられた時には心底驚きました。
何の後ろ盾もない娘が王太子殿下の側室になどなれません。
そうお断りしたら、正室だと叱られました。
なおさら理解不能になりました。
王宮内での権力闘争に打ち勝ち、暗殺の魔手から身を守るには、実家か後見人の支援が必要不可欠だからです。

ですが、エドアルド王太子殿下だけでなく、殿下の最側近であるマッシモ男爵からも、護衛を務める近衛騎士達からも、殿下の事情を聞かせていただきました。
聞かせていただいた事情をよくよく考えて、正妃として嫁ぐ覚悟を決めました。
例え誰かに狙われて暗殺されることになろうと、アンドレアとミーアを殺してくださった御恩に報いなければなりません。

そう、エドアルド王太子殿下は妹のミーアも殺してくださいました。
アンドレアとミーアを殺したことで、オートヴィル王国とマネル王国は非常に険悪な状態で、臨戦態勢を整えています。

マネル王国側から見れば、エドアルド王太子殿下をオートヴィル王国の刺客が襲撃したのですから、絶対に許せることではありません。
それが知らずに間違えての事であろうと、アンドレアとミーアの独断専行で国王が知らずに行われたことでもです。

一方オートヴィル王国側から見れば、確かに襲撃はしたけれど、失敗した未遂事件ですから、誠心誠意謝って賠償するから、報復合戦や戦争は回避しようという、身勝手な言い分になります。
エドアルド王太子殿下が死んでいないのに、アンドレアとミーアを殺すのは遣り過ぎだという、身勝手な言い分になるのです。
殺すのはミーア程度が妥当とまで考える国柄です。

両国の考え方は全く相容れません。
しかもエドアルド王太子殿下は、アンドレアが千人以上の召使を性的欲望を満たすために嬲り殺しにして、犬や虎に喰わせていたことを公表しました。
オートヴィル王国内でも噂を流しました。
オートヴィル王国のフィリッポ王は完全否定し、大恥をかかされたと激怒していますが、王都では反王家運動が盛んになっているそうです。

私が発端となった両国間の争いに、正直胸が痛みます。
でも同時に、エドアルド王太子殿下に愛されている喜びに心が満たされています。
この幸せが永遠に続くことを願っていますが、私は自分の命以上に大切にしなければいけないことがあります。
エドアルド王太子殿下の命です。

オートヴィル王国は必ずエドアルド王太子殿下に刺客を放ってきます。
アンドレアの敵討ちもあるでしょうが、このままではオートヴィル王家王国の面子丸つぶれです。
私の命を盾に使っても、エドアルド王太子殿下を御守りします!





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