「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集

克全

第4話

「事情はよく分かりました。
確かにこちらからオートヴィル王国にまで介入するのは難しいですね。
ですがすでに私が襲われています。
証拠の遺体も魔法で保存しています。
今考えれば、麻痺魔法でとらえて、証人にすればよかったですね。
そうすれば私を襲った賠償金をとれたでしょう。
次にはそうするとして、じっくりと襲撃を待ちましょう」

エド様が楽しそうです。
国際問題化しかねない、複雑で困った事だと思うのです。
私の事など見捨てる方が楽だと思うのです。
良心の呵責を感じられるのなら、私に多めの路銀を渡して、オートヴィル王国と国境を接していない国に逃げないと言えば、私も喜んでそうしたでしょう。

それを、匿って戦うと言ってくださいます。
このような正義の心は、おとぎ話でしか聞いたことがありません。
オートヴィル王国には存在しなかったモノです。
あ、いえ、忘れてはいけません。
忘れてしまったら恩知らずになってしまいます。
レベッカが私に示してくれた命懸けの情がありました。
王太子に無理難題を押し付けられていなければいいのですが……

「そうと決まれば、罠の準備をしなければいけませんね。
襲い掛かってきやすいように、警備の騎士や徒士を減らさないといけません。
その分魔道具の罠を増やしましょう。
私を襲ってきたのがアンドレア王太子とミーア嬢の放った刺客だと、捕らえた刺客が自供したことにして、オートヴィル王家とデック伯爵家に抗議しましょう」

「お待ちください、エド様。
護衛を減らすのは反対でございます。
むしろ増やしていただきたいです。
非情な事を申せば、パオラ嬢を見捨てて欲しいくらいでございます。
しかしそんな事は、エド様が聞き届けてくださらないことは分かっております。
ですから、お助けしないでくださいとは申しません。
せめて護衛を増やしてください。
魔道具を増やすのは当たり前のことでございます」

エド様の決断に、別邸のハウス・スチュワードを務めるマッシモが反対し、諫言しています。
私の事にも言及していますが、優しいくらいだと思います。
普通なら追い出しましょうと諫言するところです。
それにしても、私の実家の伯爵家を思い出せば、これほど有能な家臣を多数召し抱えられるなんて、考えられません。

やはりエド様は伯爵以上の爵位をお持ちだと思います。
侯爵や辺境伯、伯爵だとしても別格に裕福な家なのでしょう。
もしかしたら、騎士団の要職につかれていて、国境を護る任務に就かれておられるのかもしれません。
護衛というのも、エド様個人の護衛というよりは、騎士団幹部の護衛かもしれませんし、聖騎士を目指しておられるという話でしたから、それを支援するための騎士団員なのかもしれません。
ですがそうなると、エド様を襲ったことが、本当に国際問題になるかもしれません!

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