「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集

克全

第14話

「エマヌエーレ!
まずアリアンナと皇太子の婚約を破棄していたことにしろ。
次にアリアンナを養女に迎えろ。
その後でディエゴを廃嫡し、ジョルジャを廃妃しろ」

「分かりました、神々の御子。
ですがそれだけでよいのですか?
私が退位した方がいいのではありませんか?」

「今は駄目だ。
お前の失政で、お前の血を継いだ皇子皇女は皆殺しにされた。
今お前が退位したら、皇位を巡って大混乱になる。
ディエゴとジョルジャの追討どころではなくなる。
これ以上民を殺すな!
この暗愚の民殺しが!
ファインズ公爵」

「は!
神々の御子様!」

「この馬鹿が自殺したり逃げたりしないように、縄で縛って部屋に閉じ込めておけ。
ディエゴとジョルジャの首を取ったら、アリアンナに皇位を継いでもらう。
ファインズ公爵には太上皇となってアリアンナを支えてもらう。
だからこそ、皇帝だけしか知らされてこなかった神々の御子の存在を教えたのだ。
神々の期待を裏切るな!」

「は!
ご期待に添えるよう、身命を賭して務めさせていただきます」

クリスティアンは皇帝エマヌエーレを殺す決意をした。
だがディエゴとジョルジャを逃がしてしまったので、直ぐに殺せなくなった。
本当に役立たずの無能だ。
いや、役に立たないどころか悉く足を引っ張り民を苦しめる。
しかも、直ぐに殺したいのに殺せない状況にまで事態を悪化させるのだから、疫病神としか言いようがない。

しかたなくできるだけ民の損害の少ない方法をとることにした。
将来皇帝になるアリアンナの経歴に傷がつかないように、アリアンナはディエゴが謀反を起こす前に、愚かなディエゴを嫌い自ら皇太子ディエゴとの婚約解消を皇帝に申し込み、皇帝エマヌエーレに許可されたことにさせた。
しかも皇帝の養女になっていたことにさせた。
普段なら色々言う貴族士族が現れるのだが、皇太子と皇后の謀反を防いだファインズ公爵を恐れる貴族士族は、何も言わないと判断しての事だ。

暗愚のエマヌエーレが途中で口をはさんだので最後まで命令できなかったが、ディエゴを廃嫡しジョルジャを廃妃した後で、アリアンナを皇太女に立太女するのだ。
この段階で異論をはさむ貴族士族がいるかもしれないが、そんな者は殺してしまえばいいと、クリスティアンは考えていた。
少しでも不安を感じる貴族士族は皆殺しにして、クリスティアンとファインズ公爵に従う気のある人間だけで、ディエゴとジョルジャを討伐する軍を編成したかった。

ディエゴとジョルジャの首を取ったら、害悪でしかないエマヌエーレ皇帝を殺し、アリアンナを皇位につける。
クリスティアンは誰を殺してでもアリアンナを皇帝にすると決意していた。

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