「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集

克全

第9話

部屋の中はケガ人で一杯になったが、みな金色の光に包まれ、徐々に傷が治っていくという、奇跡の光景が繰り広げられていた。
当初は驚きと心配が心を占めていたアリアンナだったが、姫騎士が全員そろっている事と、ケガが徐々に治っていることで、安堵の気持ちとなった。

「ありがとうございます。
ありがとうございます。
貴男様は命の恩人です。
どうかお名前を教えてください」

「ふむ、そうだな。
アリアンナには教えてもいいだろう。
私はクリスティアンだ。
皇帝の叔父にあたる」

「まぁ!
皇叔にあたられるのですか!
これまでの御無礼御許しください!」

「なあに、気にするな。
こんな状況では仕方のないことだ。
それよりも問題はこの者達が休む場所が必要だな。
アリアンナにも公爵令嬢に相応しい部屋を整える必要がある。
ちょっと待っていなさい」

「あの、ありがとうございます。
何か御手伝いさせてください」

「気持ちだけもらっておこう。
全て魔法で行うから、手伝ってもらうことはないのだ」

「え?
魔法ですか?」

「いちいち説明するのは面倒だ。
見せてやるからついてこい」

アリアンナは素直にクリスティアンの後をついていったが、目の前で繰り広げられる光景に度肝を抜かれた。
クリスティアンが何かつぶやくと、今までいた部屋の壁にいくつもの扉が現れた。
クリスティアンについてその一つの部屋に入ってみたのだが、今いる部屋と同じような広く快適な応接間になってた。

また先ほどと同じようにクリスティアンが何かつぶやくと、この部屋にも壁一面に扉が現れるという驚愕の事態となった。
またそのうちの一つの扉を開いてクリスティアンと一緒に中に入ると、今度は寝台・机・椅子のそろった快適な寝室だった。

応接室はクリスティアンとアリアンナが使った扉がある壁と、五つの扉がある三面の壁があった。
その十五の扉全てをクリスティアンに連れられて確認したが、全部最初の寝室と同じ作りだった。

それからが大変だった。
アリアンナが姫騎士達が治癒の魔法を受けている応接室に戻ると、そこも三面十五の扉ができあがっていた。
その十五の扉の向こうには、十五の応接室があり、十五の応接室にはそれぞれ十五の寝室につながる扉があった。
都合二百二十五の寝室が作られたのだが、二十人の姫騎士には多すぎる数だ。

「あの、えっと、こんなにたくさんの寝室はいらないかと思うのですが?」

「今はいらないけれど、これからどうなるか分からないからね。
アリアンナが助けたいと思う者を全員ここに集めればいいよ」

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