「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第11話

(その心配はありませんよ。
アンジャ王子はウォード公爵と同盟を結ぶつもりです。
神々にも民を害さない事を誓っています。
そうでなければ、私が侵攻などゆるしません。
カルラ、アンジャ王子は貴女に恋しているのですよ。
幼い頃、友好を結ぶためにこの国に訪問した時に、貴方にひとめ惚れしたのです。
だから堂々としていなさい。
貴女は望まれて王妃となるのです)

正直最初は意味が分かりませんでした。
あの頃の私は、今と違ってジェイコブの糞野郎を信じ愛していました。
他の男性など、まったく眼中になかったのです。
アンジャ王子の印象など全くありません。
好きだと言われても対応に困ります。

「お嬢様、ただいま戻りました。
ご不自由をおかけして申し訳ありませんでした」

「ああ、ゾーヤ。
こちらこそ無理な事を頼んで悪かったですね。
戻って来て早速相談して悪いのですが、大変な事が起こってしまいました。
ヒューイット王家のアンジャ王子がウォード公爵領に向かっているというのです。
守護神様のお話しでは、私にひとめ惚れしているので心配いらないとの事なのですが、正直顔も思い出せないのです」

「そうですか、やっと来てくださいましたか。
私が手紙で援軍をお願いしておいたのです。
アンジャ殿下がお嬢様に恋焦がれている事は、私には分かっておりましたから、この機会に自分の魅力をアピールして、プロポーズされてはどうですかと、けしかけさせていただきました」

なんという事でしょう!
全部ゾーヤの筋書き通りだったんですね。
ルシアが王太子の婚約者だから我慢していただけで、内心では、私の事でジェイコブの糞野郎も王家も敵だと思っていたのでしょう。
今回の件を好機と考えて、王家を滅ぼす段取りをしていたのですね。

これからどうなるかは分かりませんが、まあ、幸せになれるでしょう。
ゾーヤは私が不幸になるような事は絶対にしません。
アンジャ王子は人柄のいい方なのでしょう。
それに、私には守護神様の加護があります。
万が一、アンジャ王子がゾーヤの知っている頃から激変していたとしても、人生の途中で心変わりしたとしても、守っていただけるでしょう。

「ゾーヤ。
だったら私はここにいてもいいのかしら?
領地に戻って、アンジャ王子に会った方がいのではないの?」

「お嬢様。
ここはアンジャ王子に花を持たせて差し上げてください。
私から出させていただいた最後手紙には、お嬢様はルシア様と入れ替わって、塔でアンジャ王子をお待ちになっておりますと書いておきました。
お嬢様を救うという大義名分で、王城を攻めてくださいとも書いてあります。
お嬢様は、悪逆非道な王太子に閉じ込められた悲劇のヒロインを演じてください。
アンジャ王子にはお嬢様を救い出すヒーローになっていただきます」

やれやれ、ゾーヤにこんな趣味があったのですね。
では今回の悪人退治はアンジャ王子にお任せしましょう。

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