「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第5話

(カルラ、起きなさい。
ルシアを襲おうとしている者がいますよ)

神殿の祈祷所で古い神々に祈っている時に、エリーニュス神様から言葉をかけていただきました。
よほど緊急で危険な状態なのでしょう。
私は慌ててお願いしました。

(エリーニュス神様、どうかルシアをお守りください。
私にできるお礼は何でもいたします。
どうか、どうか、ルシアをお守りください)

(心配いりませんよ、カルラ。
すでにカルラと約束していますから、ルシアは必ず守ってあげます。
私が聞きたいのは、襲ってきた者に復讐をするかどうかです。
復讐したいのなら、また神使を送ってあげますよ)

(ありがとうございます。
どうかよろしくお願いいたします)

(ではカルラにも復讐するところを見せてあげましょう。
とても面白い情景が見れる事でしょう)

エリーニュス神様はとても楽しそうです。
三面性の神様なので、三柱一緒に現れる時と、一柱で現れられることがあります。
今は三面のお姿なので、三柱一緒に復讐を愉しまれるのでしょう。
それを私にも見せてくださるのですね。
とてもありがたい話です。

私の心に、ルシアの姿が映し出されました。
最後に話した時よりもずっと大人びています。
あの頃の幼い美しさから、幼さと妖艶さが合わさった、一種独特な美しさです。
多くの貴族に言い寄られて当然の美しさです。
こんなに美しいルシアを傷つけて、他の女と情事を重ねるジェイコブの糞野郎は、色情狂としか言いようがありません。

次に私の心に映った光景は、ヴェレカー公爵ニック卿が、塔の番人達に金を掴ませ、内緒で搭に入ろうとしているところでした。
その眼は情欲にギラギラと輝き、今にもよだれを流さんばかりの厭らしい顔つきで、一気に鳥肌が立ってしまいました。
生理的に受け付けられない人間です。

表面的には、白蝋色の肌をしていて、整った容姿に美しい碧眼、入念に手入れされ少し波打つ金髪と、悪くはないのですが、表情が最悪です。
それ以上に、内面からにじみ出る厭らしさに身の毛がよだちます。
最低最悪の性格なのだと、気配だけで察することができます。

ヴェレカー公爵ニック卿が塔のカギを番人に開けさせます。
開けた番人の中には、近衛騎士までいます。
騎士の誇りも地に落ちたものです。
どうせ実力ではなく、家柄と賄賂で騎士の地位も近衛の役目も買ったのでしょう。
ですがこれでこいつらも終わりです。
この悪事にふさわしい復讐を、エリーニュス神様が下してくださいます。
私はそれを楽しみにしていればいいのです。

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