「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第3話

私は、自分の無力と無能に打ちひしがれていました。
私が考えやってきた事が、何の役にも立たなかったのです。
人を見る眼すらなかったのです。
月神アルテミスの聖女だと驕り高ぶっていただけで、実際には役立たずで、王家にも国民にも全く寄与していませんでした。

「それは聖女マチルダへの処遇でございます。
死刑にするのは簡単ですが、それでは月神アルテミス様の怒りを買ってしまうかもしれません。
そんなことになったら、新たな神の聖女を迎える利が減ってしまいます。
ここは穏便に追放刑にして頂きたいのです」

「あいや、お待ち願いたい。
それは余りに虫のいい話でございますぞ!
月神殿やアルトリア公爵への裏切りはそちらで決めればいい。
だが太陽神殿とドゼル公爵家を嘘で貶め、侮辱した事は許せませんぞ!」

私が呆然自失に陥っている間に、話が進んでいました。
信じられないことですが、アルトリア公爵が私を庇ってくれています。
国王に減刑を願い出てくれています。
何を考えているのでしょうか?
言葉通り、純粋に国の利益になる事を考えているのでしょうか?
もう自分を信じられないので、考えがまとまりません。

でも、それでも、ドゼル公爵の考えは簡単に分かります。
これも私の思い込みかもしれませんが、思い込むしかありません。
完全に敵だと思える相手と対決する以外、私に残された道はありません。
もうアルトリア公爵と敵対する気にはなれません。
敵対する事で、民を更に餓えさせ苦しませてしまうかもしれません。

「許せない?
許せないのならどうする?
私と神明裁判で対決する勇気と覚悟があるのか?
私はいつでも受けて立つぞ!
クラウディオ大神官!
お前は六柱の神々を相手に、神明裁判をする勇気と覚悟があるのか!」

裂帛の気合ですか。
小心で腹黒で欲深いドゼル公爵とクラウディオ大神官に、神明裁判で自らの手を焼く覚悟などあるはずがないのです。
絶対に浮けないでしょう。
受けなければ私の告発を否定できませんから、絶大な権力で処分は受けなくてすんでも、面目は丸潰れになりますから、以前よりも権力は低下します。

「ドゼル公爵ボニファー卿!
太陽神殿クラウディオ大神官!
神明裁判を受けるのか受けないのかどちらだ!」

デイヴット国王が厳しく問われます。
ここでドゼル公爵とクラウディオ大神官の信用信頼を失墜させ、王家の威光を少しでも取り戻すつもりですね。

「……受けません。
公爵家当主が神明裁判を受ける必要などありません!
貴族として宣誓すればすむことです!」

「そんな必要はありません。
私は太陽神殿の大神官です。
いちいち神明裁判など受けなくても、神の御意思に従っているのは明白です」

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品