「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第14話

「グルト男爵レノヴァ。
どうか我らの願いを聞き届けてもらえないだろうか?」

「伝える事は伝えますが、聞き届けていただけるかどうかは分かりません。
それに、クラリスは厳格ですよ。
一度忠誠を誓いながら、裏切るようなモノは絶対に許されません。
それどころか、陰で動くのも、法を無視することも許されません。
裏切者には魔を放たれるでしょう。
その覚悟はありますか?
まあ、現状と変わりはないですが」

「必ず護ります。
我ら一同、忠誠を誓います。
どうかクラリス様に戴冠していただきたいとお伝えください」

貴族の代表が、ファンケン公爵家を預かるレノヴァに懇願しています。
私を女王に願っています。
予想通りの展開ですね。
でもまあ当然と言えば当然です。
王都が壊滅し、王を含めた王族は絶滅しています。

一旦は王都を逃げた外道な貴族士族も、魔に襲われて皆殺しになっています。
これを好機ととらえて、この国に攻めこんできた某国の侵攻軍も、私が誘導した魔に襲われて壊滅しています。
もう一国攻め込んできた国もありましたが、同じように壊滅させました。
いえ、それだけでは済まさずに、魔を誘導してその国の王都まで壊滅させました。
この大陸で私を恐れないモノは誰一人いないでしょう。

「お姉様。
どうされたのですか?」

「そろそろ頃合いです。
領地に戻りましょう」

「もうこの楽しい旅が終わってしまうのですね。
無責任だという事は重々承知していますが、永遠にこの旅が続いて欲しいと、心から願ったいました」

「それは私も同じですよ。
私もずっとこの旅が続いて欲しいと思っていました。
でもそういうわけにはいきません。
王侯貴族には、地位に応じた責任があるのです」

「はい、お姉様」

問題は後始末ですね。
我が国の王都は封印しました。
何度もこっそりと王都に戻り、奈落の狭隘部に封印を施し、同時に王都を覆う封印もしました。

侵攻軍や外道貴族を皆殺しにした魔は、改良した封印で行き先を誘導しています。
奈落と王都の間に封じてもいいですし、少しずつ本当の戦士や騎士に狩らせてもいいでしょうね。
魔はこの世界にはない素材にもなります。
魔素材は上手く加工すれば、この世界を一変させる魔道具になるでしょう。

私の子孫が統治することになる、この国の絶対的な産業にできるでしょう。
問題は子孫の驕りと堕落をどう防ぐかです。
いつかは堕落し驕り高ぶり、滅ぶ時が来るでしょうが、その時を少しでも遅らせるのが、建国女王の私の務めでしょう。
気を引き締めなくてはいけません!

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