「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第15話

「ギャリュウウウウウウウ!」

「おっと、脱皮かな?
だとするとしばらく動くのは危険ね。
未開地に入りましょう」

「ギャリュウウウウウウウ!」

多くの冒険者に陰で悪口を言われているのは知っています。
人間の友達のいない、翅蜥蜴しか話し相手がいな、ボッチだと。
誰に何を言われても関係ありません。
私は人間を心から信用できません。
私が信用信頼できるのはレオだけです。

そのレオが脱皮の時期になっています。
この時期だけは、レオも無防備になってしまいます。
私が護ってあげなければいけません。
とは言っても、場所の選定さえ間違えなければいいのです。
今のレオはとても強く、並の魔獣は臭いだけで恐れて近づきません。

レオの強さを感じない鈍い人間こそ気をつける相手です。
脱皮で身動きできなくなっている上に、普段は強固な鱗までが柔らかくなっているのですから、私に敵意を持っている人間が一番の敵となります。
だから脱皮の時期には、一流の冒険者でも入り込まなくらい奥深くに入り、魔境や未開地でじっとしておくのです。

「ギャリュウウウウウウウ!」

レオがとても苦しそうです。
私に気を使って、ギリギリまで我慢していたのでしょう。

「レオ。
私には人間よりもレオの方が大切なんだよ。
だから今度からはそんなに我慢しちゃ駄目。
もっと早く言うんだよ」

「ギャリュウウウウウウウ!」

悲しく残念な事ですが、私には脱皮の前兆が分かりません。
いつか分かるようになるかもしれませんが、いつかでは困るのです。
とても危険なのです。
それまでは、レオに話してもらううしかないのです。
レオが私に気を使って死んでしまうようなことがあれば私も生きてはいけません。

「ギャリュウウウウウウウ!」

ある程度未開地の奥に入った時に、レオが我慢できずに脱皮を始めました。
私は急いで抱いていたレオを地に置き、周囲の警戒をします。
移動しながら周辺警戒をしていましたが、警戒し過ぎるという事はありません。
後で後悔しても手遅れです。
レオを失う恐怖に比べれば、二度手間三度手間など何の面倒も感じません。

「レオ!
大丈夫レオ!
これは本当に脱皮なの?
何か病気やケガなんじゃないの?
治癒魔法をかけようか?」

レオがとても苦しそうにしています。
今迄の脱皮ではなかった事です。
私は狂乱状態になりそうな心を叱咤激励して、冷静にいようと努めました。
ケガや病気なら治癒魔法をかけなければいけません。
でも普通の脱皮なら、治癒魔法をかける事で脱皮が失敗するかもしれません。
不安と恐怖に押し潰されそうになりながら見守る私は、驚愕の現象を見ることになりました!

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