「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第12話

私は何とか十三人の村人を助けることができました。
他の村人は全て死んでいました。
私は治癒魔法は使えますが、蘇生魔法は使えないのです。
それに、普通の蘇生魔法を使えても、ミイラ化したり骸骨化した遺体までは生き返らせる事はできません。
そんなことができるのは、伝説の復活魔法だけです。

「年貢です。
税金です。
皇国の税が倍になったのです。
諸役はそのままに、作物の八割を税で納めなければなりません。
残った二割も、諸役の代納だと奪われました。
未開地に入って採集した物も、諸役の代納だと奪われました」

反吐がでる話です!
私が国を追放されてからの二年で、この国は腐りきったようです。
安定した国の税金は、耕作物の四割程度です。
戦国乱世の地域や腐敗した国でも、六割程度になります。
それ以上奪えば、民が逃げるか飢え死にしてしまいます。

民を失ってしまったら、農地を耕作する者がいなくなります。
翌年から全く税が手に入らなくなります。
だからこそ、おのずと税の上限が決まるのです。
なかには七割の税を取立てる国や領主もいますが、その場合は諸役を免除して、農民を餓死させないように工夫します。
工夫できないような、愚かな国王や領主は、自滅していきます。

「よく今迄生きてこれたね。
この状況で子供を育てるなんて、とても立派だよ」

「誰が立派なモノか!
私は、私は死体を喰って生きてきたんだ!
この子に死体を喰わせて生き延びさせたんだ!
私達は、食人鬼となって生きてきたんだ!
立派なものか……
あああああああああ!」

魂の叫びでした。
胸がかきむしられるような痛みを感じました。
心底許せないと思いました。
この国に戻るまでは、金目をモノを盗めればいいと思っていました。
こんな国など、どうなってもいいと思っていました。

ですが、これは酷過ぎます。
とても見て見ぬふりなどできません。
このような生き地獄は、誰かが終わらさないといけませんが、誰もやってくれないと嘆くだけでは、卑怯者になってしまいます。
嘆くのではなく、自分が何とかしなければいけないのです!

私と一緒に貧民救済をしていた方々はぶじなのでしょうか?
あの時助けていた難民達は、この状況で生き残っているのでしょうか?
ふと思ってしまいましたが、生き残っているとは思えません。
アラベラの性格では、逆らう者は皆殺しにするでしょう。
変心した方は生き残れたでしょうが、何人生き残っている事か……

「キュウ、キュウ、キュウ、キュウキュ」

考えている場合ではありませんね。
レオも心底怒っています。
ここは性根をすえて戦わなければいけませんね!
でもその前にこの人達を先に助けないといけません。

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