「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第11話

「じゃあこれが約束のお金ね」

「毎度あり。
また御用の折はいつでも言ってください」

「その時は頼むわ」

私は偽造屋に礼金を払いました。
顔に罪人の刺青を入れられた私は、街道を使って関所を通過できません。
ですがこんな時のために犯罪者ギルドがあります。
犯罪者ギルドの中には、偽造屋と呼ばれる各種書類を偽造する専門家がいます。
それなりの金を積めば、出入国許可証も偽造してくれます。
私もお金を払って手に入れ、警備のいない未開地を踏破して、エヴァンズフリーク皇国に戻ってきました。

「お母さん!
しっかりしなさい!
子供を残して死んでは駄目!」

「ああ、ご親切なお方。
どうか、どうか、どうか、この子の事をお願いします。
奴隷としてくださって結構です。
命だけは、命だけは助けてやってください」

国境を抜けて初めて入った村は、悲惨な状態でした。
全ての民がガリガリの痩せ細り、異様に腹だけがでています。
寄生虫がお腹にわいているのか?
水しか飲めずにこんな体形になっているのか?
昔読んだ本に書いてあった、大飢饉の状況です。

ですがおかしいです。
私が走破した未開地は、とても豊かな状態でした。
これほど飢えるなら、命を賭けてでも未開地に入るのが普通です。
農地も水害や干害の被害を受けているようには見えません。
なぜここまで飢えているのでしょうか。

私は直ぐに考えるのを止めました。
それより先に母子を助ける事です。
飢えて死にかけているのなら、助けるのはそれほど難しい事ではありません。
レオを助けた時と同じことをすればいいのです。
能力は低いですが、この二年の間に魔法袋を手に入れました。
未開地で狩った獣や集めた果実がたくさん入っています。

「なにを気の弱いことを言っているの!
お母さんも生きるのよ!
子供を護りたいのなら、死ぬ気で生きなさい。
今踏ん張れば生き残れるのよ。
気をしっかり持ちなさい!」


私はそう言いながら、急いでの魔法袋から果物を取り出し、嚙み潰しました。
レオの時と同じ方法で、母親を助けました。
同時に、私の大好きな熟し過ぎるほど熟した果物を子供に与えました。
熟し過ぎた果物は、時にお腹を壊してしまう事があります。
本当なら、魔法袋にある穀物を煮て食べさせるべきでしょう。
でも、母親に食べ物を与えているのに、子供に与えないという選択は、私には絶対にありません。

幸いなことに、子供はお腹を壊しませんでした。
母親がほとんど全ての食べ物を子供に与えてたからです。
母親は、僅かな食べ物と引き換えに、身体を売っていたのです。
だから、このような状況でも、弱い子供が生きていけたのでしょう。

「では、なぜこうなったか話してもらいましょう」

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