「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第10話

「私はどうするべきだと思う、レオ」

私はいつものようにレオに話しかけました。
この二年の間に身に付いた習慣です。
でもおかしくなった訳ではなりません。
レオもちゃんと返事してくれます。
指針となる事を、鳴き声と身振り手振りで示してくれます。

「キュウ、キュウ、キュウ、キュウキュ」

レオが決断を勧めます。
私は今の生活が結構気に入っているので、わざわざ皇国に戻って復讐する気はなかったのです。
私が恨んでいるのはアラベラとジャスミンではありません。
勝ち目のない争いに私を放り込んだ腐れ父です。
あのような慣習を続けるエヴァンズフリーク皇国そのものです。

ですがレオには別の考えがあるようです。
レオは私の顔に入れられた刺青を気にしてくれています。
この刺青には特殊な魔墨が使われていた、レオや私の治癒魔法では消せないので、エヴァンズフリーク皇国に戻って、消す方法を探そうと言ってくれているのです。
レオは本当に優しい子です。

レオがそこまで言ってくれるのなら、皇国に潜入するのもいいかもしれません。
復讐するかどうかは別にして、治療法を探すくらいはいいでしょう。
もっとも私自身は、刺青をそれほど気にしていません。
冒険者ですから、顔を守るための防具を常に身につけています。
罪人の刺青が入った顔を晒す事は、ほぼありません。

それに、刺青を治療して普通に顔に戻してまで好かれたい相手もいません。
貴族士族の愚かさと下劣さは、以前の生活で身に染みて分かっています。
だから玉の輿に憧れたりはしません。
最初に冒険者に襲われたことで、冒険者を好きになる事もありません。
冒険者をしているようなモノに、まともな人間はいません。
みな命を対価に一獲千金を狙うバクチ打ちです。

まあ、でも、子供を産むことまで諦めたわけではありません。
稼ぐ女冒険者の中には、色男を侍らせ、逆ハーレムを築いている者もいます。
私にそんな気はありませんが、身体能力の高い男や、魔力の強い男の種だけもらって、子供を生むことも考えています。
レオにも弟や妹がいた方がいいと思うのです。

それに、レオがいつ独り立ちするか分かりません。
ただの翅蜥蜴ではないと思いますが、翅蜥蜴なら、成体になるのは人間などよりずっと早いのです。
もしかしたら、もう成体になっているかもしれません。
レオが独り立ちして家庭を持ったら、私は独りぼっちになってしまいます。

だから、真剣に子供を生み育てる事を考えています。
そのためには貯金が必要です。
最初に盗んだ金貨と、冒険者として貯めたお金はそれなりにありますが、もっと蓄えておきたいのが本音です。
皇国なら、遠慮せずに盗みを働くことができますし、戻りますか!

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