「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第4話

私は育ちがいいので、盗みなどしたことがありません。
ですが今は育ちなど関係ありません。
生き残るためには盗まないといけないのです。
誰もいないはずなのに、勝手に扉が開いてはおかしいです。
箪笥の扉や引き出しもおなじです。
探すのは人目のない場所に限られるのです。

結局現金は小銭しか見つかりませんでした。
ですが他のモノを見つけることができました。
短剣とパンとチーズと腸詰です。
ですが後から盗った物が、人の目から消えている確信がありませんでした。
これが人の目に見えるのなら、私は捕まってしまうかもしれません。
少なくとも警備兵を呼ばれてしまいます。

しかたなく魔法の香水を使ってでも、安全を確保することにしました。
荷物に持ち運ぶのに丁度いい綿布袋を見つけました。
綿布袋に短剣とパンとチーズと腸詰を入れました。
新たに見つけた鉈をも持っていきたかったのですが、私には重すぎました。
泣く泣く諦めて、綿布袋にほんの少し香水をつけました。

そして表から出て行こうとしました。
心臓が爆発しそうなくらいドキドキしています。
それこそ口から心臓が飛び出しそうです。
でも誰も私に気がつきません。
それが私を一気に冷静にさせてくれました。

冷静になって、やれるかもしれないと考えました。
店の帳場には、偉そうにした男が座っています。
店主か筆頭番頭でしょう。
その前と横には、大量の貨幣が積み上げられています。
しばらく様子を見ていいると、一定額になると、壁に作られた金庫箪笥に貨幣がしまわれます。

私は意を決して、奥に行って陶器の食器を綿布袋に入れて戻ってきました。
帳場の男がお金を移動させるのをじっと待ちました。
帳場の男が金貨百枚を箪笥に移動させるのをみて、陶器を入れた綿布袋を開いて、いつでも行動を起こせるようにしました。

帳場の男が金庫箪笥を開けた瞬間。
金庫箪笥の中に大量の金貨銀貨があるのを確認した瞬間。
陶器を店の土間に投げつけました。

ガッシャーン!

「なんだ?
だれだ?
陶器だと?!
誰がやった!
とにかく直ぐに片付けなさい!
全くなんだと言うんだ」

大きな音を立てて、土間に落ち陶器が割れます。
帳場の男が、金庫箪笥を開け、金貨を持ったまま振り返ります。
振り返って直ぐに現状を確認して、素早く店員に指示をだします。
私は素早く金庫箪笥の中の金貨と銀貨を綿布袋に入れます。
音を立てないように、慎重に、でも素早くです。
金貨二百枚と銀貨五十枚を入れた所でやめました。






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