「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第3話

「おい、女が消えたぞ?!」

「探せ!
必ず探し出せ!」

「もう買い手がついているんだぞ!
前金も貰っているんだ。
捕まえられませんでしたではすまんぞ!」

私は正直とても驚きました。
皇太子殿下は、魔獣から気配を隠してくれると言っておられましたが、視界からも消してくれる、桁違いの魔法薬のようです。
正直、皇太子殿下が心配になりました。
これほど貴重で効果のある魔法薬を私に渡してしまったら、皇太子殿下が処罰されてしまうかもしれません。

城門の直ぐ前にいたら、身体に触れて見つかってしまうかもしれません。
急いで移動しました。
ここで兵士に捕まってしまったら、皇太子殿下のご厚意を無にするだけでなく、このような秘薬を私に渡した事が明らかになってしまいます。
絶対に捕まるわけにはいかないのです!

「探せ!
何か魔道具を使っているんだ」

「馬鹿言え!
令嬢は身体ひとつで追放されるんだ。
何か持っていたなんて、今迄一度も聞いたことないぞ」

「今回から変わったんだろ!
過去より今だ!
もう前金を使っちまっているんだ!
探しだいて捕まえないと、殺されるぞ!」

どうやら最近の追放者は、この国で捕まって売られていたようです。
危ないところでした。
私は気をつけて移動しました。
絶対に身体をぶつけないように、行き止まりに追い詰められないように、注意深く、でも急いで移動しました。

なんとか兵士の包囲網の外にでることができました。
一気に走って逃げたい思いはありましたが、足音を立てるのは危険です。
水たまりを踏んでしまって、足跡をつけてもいけません。
包囲されていた時と同じように、注意深く、でも急いで移動しました。
ようやく安心できた時には、次の心配が頭に浮かびました。

私は無一文です。
武器になるモノも持っていません。
国境を越える前に、末期の食事としてお腹一杯食べさせてもらいましたから、しばらくは空腹に苦しむことはないですが、食糧の確保も急務です。
私は盗み決意を固めました。

兵士のいる国境に軍城にいること自体が危険です。
安全を優先するなら、今日中に城門を出るべきです。
でも城門を出たら、盗みに入る家すらないかもしれません。
私は大通りを往復して、両替屋を見つけました。
国境の軍城だから、両替屋があると思っていたのです。
エヴァンズフリーク皇国の金銀銅貨と、バークレー王国の金銀銅貨を交換する必要があるからです。

私はまず透明のままなのか確認してみました。
私が両替屋に入っても、誰も反応しません。
そっと店内に入り、店の奥に入り込みました。
全く誰も気がついていません。
急いで家探ししなければいけません!

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