「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第2話

「下衆は死になさい!」

私は無意識に啖呵を切っていました。
本当は黙って殺してしまうつもりでしたが、よほど腹に据えかねていたのですね。
でも今度からは気をつけなければいけません。
ほんの少しの油断が、取り返しのつかないことになるのです。
今度の事で思い知りました。

本当は嬲り殺しにしたかったです。
指を一本ずつ折って激痛を与えたかったです。
爪を一枚ずつ剥いで苦しめたかったです。
四肢をへし折ってもがき苦しむ姿を見たかったです。

ですがそんな事をすれば、貴族の誇りを失ってしまいます。
私を慈しみ育ててくれた母上の名を汚してしまいます。
私の行いが、今は亡き母上の評価につながるのです。
一挙手一投足にまで気をつけなければいけません。

だから、復讐報復をするにしても、貴族としての作法を守らなければいけません。
例え相手が腐れ外道のフセイン一味であろうとです。
相手と同じ位置にまで自分を下げてはいけません。
自分は遥か高みの貴族の誇りを守りつつ、フセイン一味に報復するのです。

だから一刀で殺してあげました。
ですが一刀といっても刀や剣を使うわけではありません。
刀や剣を使う事はできますが、それでは復讐した実感が少ないのです。
少々汚らわしい気はしますが、手刀で首を刎ね飛ばすのです。

私には生まれながらの莫大な魔力がありました。
公爵家令嬢でありながら、王族に匹敵する莫大な魔力です。
しかしながら、魔術の才能には恵まれていませんでした。
魔力はあるのにそれを外部に放出できないのです。
そうでなければ王家の養女に迎えられていたか、王太子殿下の妃に選ばれていたでしょう。

魔力を外部に放出する才能の代わり、莫大な魔力を体内に循環することができましたが、それは貴族令嬢としては問題のある才能でした。
力加減が難しく、多くのモノを破壊してしまうのです。
それは命ある動物、人間も同じだったのです。

可愛いと感じた動物を抱くだけで、圧し潰し、殺してしまったのです。
可愛いと思った動物を自分で潰し殺して、それに驚いて感情を制御できなくて、さらに多くの破壊をしてしまいました。
侍女や侍従まで殺しかけてしまいました。
そして、誰より大切な母上にまで大きな傷を与えてしまったのです。

ですが、私に死にかけるほどのケガをさせられても、優しく微笑み、私を落ち着かせてくださったのです。
私が力を制御できるようになるまで、身を挺して私の力の暴走を止めてくださったのです。
そんな母上と二人三脚で会得した身体強化魔術です。
変な使い方をすることは絶対に許されないのです!
フセイン一味は苦しませることなく一刀で殺しました。

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