「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第6話

「どこに行くつもりだ?
お前は余の婚約者だ。
勝手気ままに教会を抜け出すなど、不義密通の疑いをかけられて、この場で斬り殺されても仕方がないんだぞ。
それを分かっているのか?
直ぐに戻れ!」

どうやってこの場所を見つけ出したのでしょうか?
教会が私を探しているのは知っていましたが、王太子が探しているのは知りませんでした。
王太子は、大司祭が私をジェイコブに売り渡そうとしているのを、知っているのでしょうか?
それとも大司祭はジェイコブを裏切ったのでしょうか?
なにも分かりませんが、王太子の言う通りにはできません。

「私は聖女です。
困っている者を見捨てる訳にはいきません。
腐りきった教会にいてはやりたいことができません」

「やりたいことというのは、その子供を助ける事か?
たかだか捨て子を助けるために、教会を抜け出して、将来の王妃となれる余の婚約者の座を捨てるというのか?
そのような事は絶対に許さんぞ!
王太子である余よりも捨て子を優先するなど、絶対の許さん!」

情けない男です。
小さなプライドにこだわる心の狭い男です。
人間として必要な優しさを持たない、冷酷な男です。
こんな卑小な奴は大嫌いです。
側によられると虫唾が走ります!
声を聞かされるだけで、背中におぞ気が走るのです!

「殿下と私では見ているモノが違います。
望んでるモノも違います。
生きる道が全く違うのです。
殿下と共に生きるなど不可能です。
婚約は解消させていただきます」

「ゆるさん、許さん、許さんぞ!
婚約を破棄するなら余からじゃ!
聖女から婚約破棄を告げられるなど、余の汚点になるではないか!
絶対に許さんぞ!
これ以上余に逆らうと言うのなら、家族を捕えて拷問にかけてやる。
それでも構わんのだな!?」

ブッチ!

私は、頭の中で音がなるのを自覚しました。
堪忍袋の緒というのは、頭の中にあったのですね。
それとも、幻覚幻聴だったのでしょうか?
まあ、どちらでもいいのですが、怒りに我を忘れたのは確かです。

「でめこの野郎!
殺される覚悟はできているんだな?
家族に手をだすと言って、生きて帰れると思っているのか?!」

王太子の警護に反応させるほど、私は弱くないのです。
血統優先で採用される、惰弱な王家騎士団など、モノの数ではありません。
彼らをすり抜けて、王太子の胸ぐらをつかんで脅かしていました。

でも脅かすだけではすましません。
絶対に家族に手出ししなくなるくらい、痛い想いをさせおかなければいけません。
そうでなければ安心できません。
王太子だけではなく、王太子の意を汲んで独断専行するモノも思い知らせておかないと、安心できないのです!


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