「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第5話

「ご苦労様です。
お陰で助かっています」

「いえ、大したことではありません。
聖女様にそのように言っていただけるなど、もったいないことでございます。
次にいつ来られるか分かりませんので、新鮮な食材に加えて保存食も用意してきましたので、確認してください」

父上の門弟の一人、ドロヘダ騎士家のワイアット殿が食糧を届けてくれました。
ワイアット殿は、父の門弟の中でも師範代を務められるほどの強者です。
しかも単に武芸だけを極めているだけではなく、魔法も使える魔法戦士なのです。
実力だけで言えば、直ぐにでも家督を継ぐことができます。
ですがドロヘダ騎士家も我が家と同じ貧乏騎士家ですから、ワイアット殿が後を継ぐのをできるだけ遅らせて、その間に冒険者としてお金を蓄えるのです。

そんな彼だからこそ、父上も安心して私との連絡役を任せているのです。
ワイアット殿の他にも数人の連絡役が選ばれていますが、みな父が信用信頼する師範代や高弟です

ワイアット殿が届けてくれたのは、生鮮食品である肉と野菜と果物、日持ちのする干肉やサラミや干海草を届けてくれました。
他にも王都を逃げ出す時のことも考えて、軽くて日持ちがして栄養のある小麦粉とオリーブオイルを用意してくれました。
慎重な性格なので、常に意周到なのでしょう。

「それと気を付けていただきたいのですが、教会の手のモノが先生の家の周りを張り込んでおります。
私は尾行をまいたつもりではありますが、私以上の人間が尾行している可能性もあります。
細心の注意をされてください」

「分かりました。
それで旅支度を持ってきてくれたのですね」

「はい。
完全な準備はできませんでしたので、私が来れるかどうかは分かりませんが、次に来る者が残りの支度を用意します」

「ありがとう、これは少しだけど取っておいて」

「ありがとうございます」

ワイアット殿が遠慮することなく費用と礼金を受け取ってくれました。
父上から厳しく言われているのでしょう。
弟子に負担をかけるなど、父上がされるわけがないのです。
それに私が金持ちなのも伝えてくれているのでしょう。
本当に必要になったら、いくらでもお金は稼げますから。

問題は教会でもお金でもありません。
この子に呪いがかかっているという事です。
この家を借りてから、色々と調べました。
この子がバケモノのような顔になった原因を調べたのです。
呪いでした!
質の悪い強力な呪いが原因だったのです。

許せません!
このような残酷な呪いをかけたモノを、絶対に許しません!
必ず報いを受けさせます。
ですがまず先にしなければいけないことがあるのです!




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