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転生武田義信

克全

第236話事前討議

1576年7月:薩摩一宇治城・本丸義信私室:鷹司義信・織田上総介信長・真田弾正忠幸隆・黒影・闇影・影衆:鷹司義信視点

「殿下。奉天伯は何と」
「義近に厳罰を与え、春奈殿に有能な夫を紹介するように、強く求められている」
「気を使って下さっていますな」
弾正忠の言う通りだ。
信繁叔父上にしてみれば、ここで何も求めず、義近に温情を与えるように願い出てきたら、信繁叔父上の名声は鰻登りだろう。
あえて自分の名声を落とす事で、武田諸王家内で余計な後継者争いが起こらないようにして下さっている。
「やれやれ、君主としての力量に雲泥の差がありますな」
「上総介殿。余り厳しく言い過ぎますな」
「だがそれが事実であろう。弾正忠殿」
「その通りではあるが、武将としての力量がない訳ではない」
「それは、傅役と側近が優秀だからだろう。どの御子が総大将を務められても、天竺を平定する事は可能だった」
「傅役と側近が優秀な事は認めるが、大馬鹿が総大将であったら、言う事を聞かずに敗れることもある」
「そんな事はあるまい。殿下や陛下が監軍を派遣されているのだぞ。余りに愚かであったら、押し込めて軍権を取り上げていたはずだ」
「まあ、そうであろうな。うむ。それが出来るのは、有能な方が君主であったからだな」
「分かっておられるではないか。君主たる者、有能でなければならん。長子継承である以上、代を重ねると無理ではあるが、少なくとも初代や二代は、優秀な方に君主について頂かねばならん」
やれやれ。
事前に二人で打ち合わせていたのか、それともこの場で即興にまとめたのか、義近に厳罰を与えるように話をもって行っている。
俺が緑ちゃんに配慮する事と、影衆が義近を庇う事を危険視しているのだろう。
だが、そんな事は杞憂でしかない。
俺が女の願いを優先して、政を捻じ曲げることはない。
義近が馬鹿をやったから心配なのだろうが、今迄の俺の行いを思い出してもらいたいものだ。
影衆に関しても、飛影が現地に行って義近を直に見て厳罰を認めたら、現役の影衆も反論などしない。
「奉天伯の配慮を無駄にするわけにはいかん。義近には厳罰を与え、春奈殿に有能な夫を探す。どの程度の罰がよいと思うか」
「陛下なら、剃髪させて隠居と言う処分を選ばれるでしょうが、殿下は選ばれないでしょうな」
「今の陛下は、僧籍に入れることはなされないよ。そんな事をすれば、選ばれた宗派が力を持つ可能性がある。僧兵が暴れるような未来は防がないといけない」
弾正忠がいう方法は、仏門が僧兵を蓄えて領地を攻め取り、兵力と財力持っていた時に、それを取り込むための方法の一つだった。
だが今では、そんな方法は悪手でしかない。
今の信玄が、そんな方法をとるはずがない。
「皆忌憚のない意見を申せ。その上で最も良いと思われる方法を選ぶ。余は弾正忠の意見を否定したが、それが正しいと思う者は、余に遠慮せず諫言してもらいたい」

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