転生武田義信

克全

第224話攻防②

1575年4月:ゴア要塞都市・武田信廉と側近:武田信廉視点

「殿。中城の城門を突破致しました」
「そのまま一気に内城に攻め込め」
「御意」
糞。
予想以上に弾薬を使ってしまった。
ポルトガルの城が、これほど堅固だとは思ってもいなかった。
家臣の死傷者も多い。
このままでは、城を落としても、主導権を失ってしまうかもしれない。
信龍や信智以上の功名をあげなければ、主君には成れん。
だが同時に、家臣を失い過ぎたら、信龍と信智に追い落とされるかもしれん。
あいつらも、天竺で力を手に入れ、下克上を企んでいるはずだ。
この城を落とすのは余でなくてはならないが、その後の掃討戦は、あいつらにやらせて、戦力を磨り潰させる。
「殿。狼煙が上がっております」
「南門の今川様も、城門を突破されたようですな」
「遅いわ。我らが中城に入り込んだから、敵が引いたのだ。今頃城門を破っても、手柄とは認めんぞ」
「しかしそのような事を殿が申された、今川様が殿から離反するかもしれませんぞ」
「何だと」
「人の心は難しいモノでございます。殿が今川様を罵ったのに、監軍の猿渡様が今川様の功名を認められたら、今川様の心は王国に戻ってしまいますぞ」
「ならばどうせよと申すのだ」
「この戦いに参加した将兵の功名は、監軍様に御任せするのです」
「総大将は余であるのに、功名を与えることが出来んと申すのか。信龍と信智は、余の与力であろう」
「しかしながら、その権力は王家の後ろ盾があってのことでございます」
「‥‥‥」
「殿はこの天竺で、自立するのではないのですか」
「そうだ。余は天下に覇を唱える。もうこれ以上、義信や信繁に後れを取るのは我慢ならん」
「ならば、王国の権威を当てになされますな」
「うぬぅぅぅ」
「これからは、与力の方々が無条件で従うとは思われますな」
「そんな事は、言われなくても分かっておる」
「ならば、与力の方々が裏切らないように、話す事にも細心の注意を払われませ」
「分かっておる」
「では、功名の判定は、猿渡様の御願して宜しいですな」
「分かっておる」
小次郎め、図に乗りおって。
主君を何だと思っとるのだ。
余を誰だと思っておる、武田家の正統を継ぐ者だぞ。
「殿。西門も突破したようでございます」
「今頃遅いわ」
「しかし殿。元々西門は囮でございますし、五人の一門衆の寄り集めでございますれば、最後になるのは仕方ないのではありませんか」
「分かっておる。いちいち分かり切った事を申すな」
「申し訳ございません」

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