転生武田義信

克全

第222話苦戦

1575年4月:ゴア要塞都市東門前・武田信廉と信廉家老:第三者視点

「殿。想定通り、敵が西門前に集結しております」
「罠に嵌ったか」
「はい」
「北門と南門はどうだ」
「北門は土岐様が、南門は今川様が準備を整えておられます」
信廉は、陽動作戦の一環として、桜井信貞・穴山信君・下条信氏・根津政直・岩手信盛に西門を攻撃させた。
馬を運搬出来なかったので、将兵に砲車と荷車を人力で引いて、拠点の陣地からゴア要塞都市まで侵攻してきた。
もちろん砲車や荷車を進めるために、道づくりから始めていた。
奇襲をするのなら、そんな目立つ方法は悪手なのだが、武田軍が攻めてくることは、ゴア要塞都市でも先刻承知のことだと考え、誘いも兼ねての道づくりだった。
ポルトガル軍が、ゴア要塞都市を出て迎撃してくれた方が、信廉には都合がよかったからだ。
だがポルトガル軍の指揮官も馬鹿ではなかったようで、ゴア要塞都市から出撃しなかった。
信廉は侵攻路が完成してから進軍を開始したが、拠点となる砦は、工藤祐長(内藤昌豊)と春日虎綱(高坂昌信)の軍一万兵に守備を任せることになった。
これは武田知信(武田信玄)王の最初からの作戦で、信廉にどうこう出来る問題ではなかった
当然監軍の猿渡飛影が五千の兵を率いて付いて来る。
義信の指揮下で、常に最前線で戦い続けてきた猿渡飛影の軍は、ほぼ日本人武士で編成された、信廉達の軍を凌ぐ強さだった。
謀叛に踏み切る前に、猿渡飛影を暗殺しなければ苦戦は必至だった。
砦を護っている工藤祐長と春日虎綱が味方してくれればいいが、そうでなければ敗死の確立が高くなる。
出来るだけ火薬や砲弾を数多く残し、人的損害も少なくして、要塞都市を占領しなければいけない。
要塞都市の破壊も、自分達が直ぐに再建できるように壊さなければ、武田本家の攻撃を凌げなくなる。
少なくとも二百万石の領地を保証しなければ、工藤祐長と春日虎綱を味方につける事は難しく、要塞都市占領だけではなく、周辺地域の侵攻もしなければならない。
初めて上陸した異国で、それだけのことをするのは不可能に近い。
信廉は、バサイム要塞都市の攻撃を始めて、改めて自分がどれほど難しい立場にあるのかを理解した。
「狼煙が上がりました」
「西門を突破出来ないか」
「仕方ございません。兵の数も砲の数も少なすぎます」
「だが、マラッカもジャカルタも、簡単に攻略していたではないか」
「マラッカとジャカルタは、影衆が事前に調略しておりました」
「バサイムはしていないと言うのか」
「していると思われますが、それを使うのは義近様が親征される時でしょう」
「我々は見殺しか」
「最初から殺す心算だと申しているではありませんか」
「糞」

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