転生武田義信

克全

第220話侵略

1575年4月:インドのゴアから十キロメートルの沿岸・武田信廉と信廉家老:第三者視点

「殿。何としても勝たねばなりませんぞ」
「分かっておる。だが負ける要素などないぞ」
「確かに」
武田信廉と家老はカカとして笑った。
ゴア攻略の準備は、十分な時間をかけていた。
偵察隊が何度も海岸戦を調査して、砦を構築する場所を選定したのだ。
築陣の資材も十分手配されていた。
棄兵のはずの信廉達に、ここまで準備するのが不思議なほどであった。
艦艇に搭載されている、各種ボートで安全に上陸し、砦を完成させた。
これでは、粛清するのに大きな被害が出てしまう。
「小次郎。本当に我々は粛清されるのか」
「間違いございません」
「だが、粛清する心算の相手に、ここまで万全の支援をするか」
「しかし、御子達が人質に取られております」
「それは、昔からの武家の習いであろう。それに、皆それぞれ御子方の側近として仕えておる」
「御子達を人質として、自裁を強いてくるかもしれません」
「ふん。天竺の覇王の座が見えておるのだ。誰が自裁などするものか」
「それでこそ殿でございます」
武田信廉は、弟の土岐信龍と今川信智はもちろん、一門の桜井信貞・穴山信君・下条信氏・根津政直・岩手信盛は何の文句もなく配下に入ると考えていた。
そしてその戦力があれば、天竺など簡単に制覇出来ると考えていた。
事実ゴアは、僅か千五百兵のポルトガル軍に占領され、援軍のビジャープル王国軍とオスマン帝国軍を撃退しているのだ。
ポルトガル軍より強い、武田軍が二万兵もいるのだがら、驕りが出るのも仕方がない。
だが、それぞれが覇王を夢見ている場合、武田一門が天竺で相争う事も考えられたし、武田諸王家に詫びを入れる為に、信廉の首を狙う事も考えられた。
「だが、馬がいない事が痛いな」
「それが、王家の罠かもしれません」
「馬がいないから、我らがポルトガル軍や天竺軍に遅れをとると言うのか」
「負ける事はありませんが、多少は苦戦するかもしれません。兵を一万石当たり百兵に制限したのも、我らの力を削ぐためだったかもしれません」
「乗船出来る兵数に限りがあると言うのは、我らを欺くための嘘というのか」
「乗船数に限りがあるのは確かですが、それならば派遣を数度に分ければ済むことでございます」
「同士討ちさせる心算だと申すのか」
「御味方を疑う訳ではありませんが、中に刺客が紛れていないと言い切れません」
「弟や一門が、儂を裏切ると言うのか」
「元々王家に仕える同格の武家でございます。王家に返り忠を願う方が出られるかもしれませんし、このような好機に、殿に従うだけで満足されるとも思われません」
「うぅぅむ」

「上陸軍」
武田信廉:五千兵
土岐信龍:五千兵
今川信智:五千兵
桜井信貞:千兵
穴山信君:千兵
下条信氏:千兵
根津政直:千兵
岩手信盛:千兵
猿渡飛影:五千(監軍)

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