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転生武田義信

克全

第210話処分③

1575年1月:薩摩一宇治城・本丸義信寝室:鷹司義信と正室・側室:義信視点

やれやれ、緑ちゃんも必死だな。
いや、影衆全体が義近に力を入れていたから、ここはちゃんと対処しないといけない。
影衆には、これからも頑張ってもらわなければならない。
縁も所縁もない異国に潜入し、信用を得て権力者に近づき、重要な情報を集めるなど、危険極まりない任務だからな。

「分かっているよ。心配しなくてもいい」
「では、義近にも五百万石の領地を与えて下さるんですか」
「最後にだよ。先ず武田本家の直轄領を確保して、信基、義剛、義正に領地を与え、各国の付家老となる、信実、信友、勝虎にそれぞれ百万石を与えてからだよ」
「そうですか。矢張りそうなりますか」
「まあ、影衆が御膳立てしてくれた縁談を潰したのだから、最低限これくらいの懲罰は受けてもらわないとね。影衆の面目が立たないよ」
「そうですね。しかたありませんよね」
「せめて、縁談が表向きになる前に相談してくれたら、波風立てずに全て丸く収まったのだけどね」
「そうです。あの子は何時までも子供で困ります」

中途半端に大人になったから、こんなことをしでかした。
ここでしっかりと、自分の立場と武田家内の力関係を弁えてくれないと、将来信繁叔父上の兵部卿家と争わなければならなくなる。
情熱的な恋愛をする人間は、新たな恋に情熱が移る事も多い。
そんな痴情のもつれから、信繁叔父上や義勝達の面目を潰す事は、絶対にあってはならない。
まだスヒター王女が相手なら、俺が悪役になってマラッカ王家を根絶やしにすれば済む事だが、信繁叔父上の家が相手となると、義近を殺さねばならなくなる。

「これはくれぐれも言っておくが、信繁叔父上の家と争う事だけはあってはならない」
「私も影衆として働いてきました。重々理解しております」
「もし義近が他の女に現を抜かし、春奈姫を蔑ろにして哀しませるようなことになれば、最悪義近を殺さねばならない。余からも厳しく伝えておくが、緑ちゃんからも厳重に注意しておいてくれ」
「はい。影衆が整えた縁談を潰して正室に迎えるのです。春奈姫が自ら御褥辞退をするまでは、他の女子に指一本触れる事も許されません」
「春奈姫が自ら御褥辞退と言っても、義近が言わせるように仕向けたら、それも処罰の対象だよ」
「分かっております。その事も厳しく手紙を送ります」
「そうしてくれ。余も手紙を送るが、実の母親が手紙を送る方が効果があるだろう」

問題はインド侵攻だ。
インドには魅力的な女性が多いから、その魅力に惑わされる可能性がある。
そんなことにならないように、義近だけオーストラリアに分派するか。
本当は、シベリアの軍と連動して、全軍でヨーロッパに攻め込む心算だったが、オーストラリアだけは別枠にしてもいかもしれない。
俺の知る範囲では、オーストラリアの侵略は簡単だったはずだ。

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